ドヤ街山谷の現状2019!ドイツ人に向かってホームレスが「ハイル・ヒトラー」と絶叫!! 刃物男、不穏な公園…村田らむが取材!

 

 閑話休題。

 ここまでは、昼以降の山谷について語ってきたが、本来ドヤ街として一番機能するのは早朝だ。

 5時頃に山谷に来ると、泪橋交差点を中心に、464号線と306号線(明治通り)沿いに、バンがズラッと並んでいた。そして、日雇い労働者が仕事をもらうために並んでいる。

 僕が取材した頃には、すでにずいぶん日雇い仕事は減っていたが、それでも10台以上は自動車が並んでいた。

 労働者を集めるのが仕事の手配師たちが

「現金あるよ?。現金あるよ?」

 と労働者たちに声をかけていた。なんと僕にも声をかけてきた。

 手配師が、顔見知りでない人を仕事に誘うということは、かなり労働者が不足していたのだろう。なんのかんの2000年代初頭までは、ドヤ街として機能していたのだ。

 早朝にそれだけ道路沿いに人が集まるため、飲食店もそれに合わせてオープンしていた。昼間に訪れるとシャッターがおりていた喫茶店も、早朝には多くの客で賑わっていた。お弁当屋さんでお弁当を買う人もいる。

 玉姫公園の周りでは『泥棒市』と呼ばれる市が出ていた。盗んできたような物も売っているから、そう呼ばれている。食べ物を売っている人、軍手やタオルなどの仕事で使う物を売っている人、ワゴン車で来て服を大量に売っている人、人形やらリモコンやらガラクタを並べて売っている人、エロ本やDVDを売っている人、などなどだ。

ドヤ街山谷の現状2019!ドイツ人に向かってホームレスが「ハイル・ヒトラー」と絶叫!! 刃物男、不穏な公園…村田らむが取材!の画像13

 昼以降では感じることのできない活気良さがそこにはあった。

 なんだか、まだ太陽の昇りきらない薄暗い中、活動している人たちと共に過ごしていると、なんだかファンタジーの世界にいるような気持ちになったのを覚えている。

 それからも定期的に山谷には足を運んでいたのだが、ここ数年は行っていなかった。

 特に、早朝の山谷にはもう10年近く行っていなかったと思う。

 そんな折、2019年の5月、取材協力の依頼がきた。依頼主はドイツのテレビメディアで、日本の貧困を取材しているという。通訳兼コーディネーターはイタリア人の女性で、彼女は日本の事情に非常に詳しかった。「労働者が仕事に行く様子を取材したい」と言われたのだが、正直むつかしいなあと思った。

「山谷という場所がかつては寄せ場という、日雇い労働を斡旋する場所になっていたのですが、現在はどうなっているかわかりません」

 と正直に答えた。それでも取材したいというので、早朝にテレビクルーと山谷に行った。

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