人間の冷凍 → 蘇生試験開始を米が発表! 仮死状態にして治療する新手法“EPR”&人工冬眠の実現間近
将来の宇宙旅行に欠かせない技術の一つが人間の冷凍保存であるが、その開発の糸口が見つかったかもしれない。米国の医学者が怪我人を急冷して仮死状態にし、治療後に蘇生させるという手法の臨床試験を行うと発表したのだ。英「The Guardian」(11月20日付)ほか、多数メディアが注目している。
・Humans put into suspended animation for first time (The Guardian)
人間を仮死状態にして治療するという新手法「Emergency Preservation and Resuscitation (EPR、緊急保存および蘇生)に挑んでいるのは、米メリーランド大学医学部教授サミュエル・ティッシャーマン氏らのチームである。彼らが計画している臨床試験で治療の対象となるのは、刃物で刺されたり銃で撃たれたりして大量出血し、心停止したような重傷者だ。心臓が停止すると脳はすぐに酸素不足に陥り、わずか5分で回復不可能な損傷を負ってしまう。そのため、このような患者の生存率は5%未満だという。
EPRでは、患者の血液を冷やした生理食塩水で置き換え、脳を急速に10度以下に冷却、治療が終わった後に体を温めて蘇生させる。生理食塩水は大動脈に直接送り込まれるため、患者の脳の活動や生理機能は急速にほぼ停止するという。この方法によって、患者を治療するための時間を1時間以上稼ぐことができるといい、患者の生存率を上昇させる上、心停止による脳への損傷も抑えられると期待されている。ただ、患者を蘇生させる時に細胞を損傷させる恐れがあるといい、それを抑えるための薬剤を探している最中であるというから、未だ研究途上の技術であるのは否めない。
ティッシャーマン氏によると、EPRは豚を使った実験で有用性が証明されているといい、今回の臨床試験で人間での効果も明らかにしたいとのことだ。重傷者を対象にした緊急時に行われる手法のため、臨床試験は患者の同意なしで行うことが可能であり、すでに少なくとも1人の患者にEPRを使った治療が行われたようだ。ただ、その結果がどうなったのかティッシャーマン氏は明らかにしていない。研究は2020年末をめどに行われ、EPRを受けた患者10人と現在の標準治療を受けた患者10人を比較することになっている。
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