右頬が裂けた少女が…!コックリさんよりも怖い「キューピットさま」で本当にあった怖い話! 川奈まり子の怪談「降霊」

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画像は「Getty Images」より引用

「はい、はい。なら、私が訊くからさ。最後の質問ね! ……キューピットさまは、私たちが呼ぶ前は、いったいどこにいたんですか?

――「さ」「む」「い」「く」「ら」「い」

「寒い、暗い? 不気味だなぁ! ねえ、多恵ちゃんたち、本当に鉛筆を動かしてないんだよね?」

――「く」「る」「し」「い」

 誰も何にも訊いていないのに、勝手に鉛筆が素早く動いて文字を指し示しだしたので、3人は揃って悲鳴をあげた。

――「し」「ね」

「キューピットさま、キューピットさま、お戻りください!」

 マキコちゃんが叫んだ。多恵さんとミサキさんも大声で復唱したのだが。

――「し」「ね」「し」「ね」「し」「ね」「し」「ね」「し」「ね」「し」「ね」

 多恵さんたちの人差し指を引き千切らんばかりの勢いと速度で、鉛筆が「し」と「ね」を行ったり来たりしはじめた。

 たちまち、「し」と「ね」のところの紙が破けて、黒い穴が開いた。

 ミサキちゃんが叫んだ。

「指が離れない! 痛い、痛い! 助けて!」

 多恵さんも、慌てて鉛筆を振りほどこうとした。しかし、かえって指が鉛筆にガッチリと絡みついてしまい、恐慌をきたした。

「怖いよぉ! もうヤダ!」

「せーので、机を突き飛ばそう!」

 マキコちゃんだった。

 押しが強すぎるところがあるけれど、こういうときは頼もしいかぎりだ。本人だって、見れば、目に大粒の涙を浮かべているのに。

「せーの!」

 マキコちゃんの掛け声で、多恵さんたちは、囲んでいた机から思い切って飛び離れた。

 鉛筆が、パタリと倒れた。

 みんなの指が離れたのだ。

 途端に、掌で壁を叩くような音が、そこらじゅうから聞こえはじめた。

 大勢の人々が教室を取り囲んで、外から壁や窓を叩いている。

 そうとしか思えない気配と音が溢れているが、窓の外に誰の姿が見えるでもなかった。

 第一、ここは3階なのだ……。

 3人は教室から逃げ出そうとした。

 しかし教室の引き戸は戸袋に接着されてしまったかのように、こゆるぎもしなかった。

 ガタガタと揺することすら出来ない。尋常ではない閉まり方だ。

 ……3人で泣きながら、キューピットさまとして呼び出してしまった魂に「ごめんなさい」「許してください」と必死に謝った。

 すると、5分か10分か、だいぶ経って、音が鳴りやみ、引き戸が開いた。

 静かになってみると、キューピットさまの紙と鉛筆があって、椅子が3脚、倒れているだけで、教室にはどこにも変わったところは見受けられなかった。

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