右頬が裂けた少女が…!コックリさんよりも怖い「キューピットさま」で本当にあった怖い話! 川奈まり子の怪談「降霊」
……一つわかれば、他のことも知りたくなってくるものだ。
「キューピットさまは、人間でしたか?」
――YES
「わあ! だったら幽霊ってことかな? 次は多恵ちゃんが質問しなよ」
「わかった。えーと……。キューピットさまは、何歳でお亡くなりになったんですか?」
――「1」「4」
「14歳で死んじゃったなんて、かわいそう! 次はマキコちゃんの番だよ」
「それじゃあ、なんで死んじゃったんですか?」
――「く」「う」「し」「う」
「くうしう?」
「あっ! 空襲のことじゃない? 戦争のとき、この辺は焼け野原になって、いっぱい人が死んだっていうから……」
「ああ、多恵ちゃんの家は代々この辺に住んでるんだもん、詳しいよね。次はミサキちゃんの番だよ?」
「ええ、私? もういいでしょ? なんか、だんだん怖くなってきちゃった……」
ミサキちゃんの姉は14歳で、このキューピットさまと同い年だ。そのせいで、幽霊の存在がにわかに現実味を帯びて感じられてきたのかもしれない。
多恵さんも、少しばかり怖じ気づいてきた。
マキコちゃんは忘れてしまったようだが、5年生になってすぐの社会科見学で区の郷土資料館に行ったときに、第二次大戦の東京下町大空襲のときに焼けた服や家財道具といった生々しい資料を見たり、先生方や区の職員の方から当時の悲惨な話を聞かされたりした。
それに、マキコちゃんに指摘された通りで、大昔からここ下町で暮らしてきた家であるせいか、空襲で死んだ親戚の話も再三、耳にしている。
さらにまた、夕暮れが迫り、気づけば、もうずいぶん窓の外が陰っていて、この後、暗い道を帰ることを思うと、ゾッとした。
そのうち、マキコちゃんが「何よ、2人とも!」と、痺れを切らした。
「しょうがないなぁ。本当に信じちゃってるわけ? 私は多恵ちゃんが鉛筆を動かしてるんだと思ってたんだけど?」
「違うよ! 私は動かしてない!」
多恵さんが否定すると、「私もやってないよ!」と、ミサキちゃんも急いで言った。
マキコちゃんは、呆れたような溜息をひとつ吐いた。
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