セックスを強要する美しすぎる「発光女」の生霊 ― 川奈まり子の実話怪談『いきすだま ~追う女~』

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 マミは、酒の席で新しい知人から紹介された女だった。アイドルか読モ(読者モデル)のようだというのが第一印象だった。

 22歳の会社員だということだが、素人とは思えぬ華があり、小顔で全身ほっそりとしていた。輝きの強い大きな瞳が印象的だった。年齢よりずっと若く見える童顔で、貴司さんによれば、「一連の出来事のずっと後に、テレビでタレントの中川翔子さんをお見掛けしたとき、似ていると思いました」とのこと。

「容姿だけやのうて、声や喋り方もちょうどあんな感じで……。マミは東京弁を喋る子やったので、そんなところも〝しょこたん〟に似てました」

 彼とマミとは、たちまち意気投合して、その夜のうちに携帯電話の番号とメールアドレスを交換し、すぐにデートの約束を取り付けた。

 そして、ほどなく肉体関係を持った。

 驚いたことにマミは処女だった。キスや抱擁に積極的に応えるようすや、付き合いだして早々にベッドに誘っても喜んでついてきたことから、それなりに男性経験を積んでいるものと貴司さんは勝手に思い込んでいたのだが……。

 思いがけず、初体験の相手をつとめたわけである。

 一夜目の交わりは、ぎこちないものだった。しかしマミは、最中の反応が薄かった割に、なぜか非常に気に入ったようだった。

「ありがとう。こんなにいいものだなんて、知らなかった」

セックスを強要する美しすぎる「発光女」の生霊 ― 川奈まり子の実話怪談『いきすだま ~追う女~』の画像2
画像は「Getty Images」より引用

 もっともっとと熱く求められ、貴司さんも得意になって挑みかかるうちに深みに嵌った。何度も達するうちに睡魔に襲われて女体の上に倒れ伏したが、眠りに落ちる直前に、黒い瞳が視界を占めた。

 マミが大きく目を見開いて、間近から覗き込んでいたのだった。

 一瞬のことだが違和感を覚え、真っ暗な穴と化した瞳孔に墜落していくように感じた。

 だが、目が覚めたときには、初対面のときと変わらない、少女めいた可愛らしさを振り撒く、綺麗だが平凡な女にマミは戻っていた。だから、暗い穴みたいな眼、あれは夢だったのだと思うことにして、そして、また挑まれたり挑み返したりしてベッドの上で長い時を過ごした。

 出逢ってから付き合いだすのも早かったが、お互いの欲情に溺れたあげく、同棲しはじめるまでも、あっという間だった。

 マミは、関西圏に住むようになって長いようなのに東京弁で喋り、出身地については語りたがらなかった。

 独り暮らしでも、若いうちは、仕送りされた米や野菜が入っていたダンボール箱が部屋にあったり、会話の中に頻々と親兄弟が登場したりして、実家の影がうかがえるものだ。

 しかし、マミにはそれがなかった。

 中学や高校の同級生の話もしなかった。高卒で働きはじめたと言っていたけれど、愛嬌があって人好きがする外見なのに、特に親しい友だちや仲の良い同僚もいないようだ。

 独りぼっちで、四畳一間の古いアパートに、ほとんど家具も置かずに住んでいた。また、たまたま酒の席で出逢いはしたけれど、お金がもったいないので、ああいう場所には滅多に足を向けないのだと話していた。服も、あまり買いたがらない。

 低収入なのは確か。しかしそれ以上に、何かわけありなことが察せられた。

 だから貴司さんが借りていたマンションの部屋にマミが転がり込んできたときには、快く迎え入れた。家賃や光熱費なども取らなかった。

 つまり、貴司さんの方では、性欲だけが同棲した理由ではなく、彼女を助けたい気持ちもあったのだ。

 だが、マミは違った。

「最初のうちは、僕もマミとするのが楽しくて仕方がなかったから、気がつくまでに3ヶ月ほどかかってしまいました。普通のカップルなら、お互いに休みの日には、映画や演劇を観にいかへん? とか、少し遠出して観光地に行ってみよか? とか……外食しぃへんとか……何やあるでしょう? 家で2人きりで過ごすにしてもテレビを見るとかゲームをやるとか……。ところがマミは、暇さえあればセックスセックスセックス、セックスばっかりで、他には何もしたがらなかったんですよ!」

 可憐な美女が、昼夜を問わず欲情して迫ってきてくれるという、まるでポルノ漫画の設定のような話である。もしかすると、贅沢な悩みと思う読者の方もいらっしゃるかもしれない。

 私も初めは、一体どんな種類の自慢話か、と、嗤いそうになった。

 しかし、インタビューを進めるうちに、想像したのとは全く違う事態だったことがわかったのだ。たとえば、そう、貴司さんは、毎朝、下半身を「襲われて」目が覚めるのが耐え難かったと私に打ち明けてくれた。

 残業して深夜に帰ると、マミが、キャミソールとパンティだけなどといったしどけない姿で待ち構えていることも、喜びから苦痛に、やがては恐怖に転じていったそうだ。

 半年もすると、彼は涙ながらに再三、彼女に懇願するようになった。

「頼むから、僕の意思をシカトしんとくれ! 僕だって疲れて、したくないときもある。僕も人間やねん、僕の気持ちやそのときの気分を尊重してほしい!」

 はっきりと、「こんなのは強姦やで!」とマミに訴えたこともあった。「これはレイプや! やめてくれ!」と。

 けれども、マミは薄笑いを浮かべて、尚も迫ってきた。

「男なのに、女にヤられるわけないじゃない? ほらね? 抵抗してるのは、お口ばっかり……」

セックスを強要する美しすぎる「発光女」の生霊 ― 川奈まり子の実話怪談『いきすだま ~追う女~』の画像3
画像は「Getty Images」より引用

 自分が人間扱いされていないことを思い知らされて、貴司さんは深く傷ついたという。

 自己嫌悪に陥りながらも交われていた時期もあった。だが、だんだんと、いくら怒っても拒んでも、へらへら笑いながらにじりよってくる彼女が、それこそ人間ではない、おぞましい化け物のように遂には思われてきたとのこと。

 一緒に暮らしだしたのが5月頃で、その年の暮れには、もう二度と欲情するどころではなくなってしまった。

 帰宅するのが厭で、夜遅くまで外で時間を潰すようになった。ダラダラと残業したり、繁華街で飲み歩いたり、終夜営業のファミレスに居座ったり……。

 家に帰ればマミに襲われ、満足に眠ることも出来ない。

 しかし、何日も帰らないわけにもいかない。ストレスが積み重なり、そのうち遂に風邪で寝込んだ。

 それがまた、地獄の始まりだった。

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