セックスを強要する美しすぎる「発光女」の生霊
セックスを強要する美しすぎる「発光女」の生霊 ― 川奈まり子の実話怪談『いきすだま ~追う女~』
「私も会社を休んで、タカシくんの看病をするぅ!」
会社から3日間休みを貰ったと告げるや否や、マミがこう宣言して蒲団に潜り込んできたのである。
蒲団の中で、下半身をまさぐり、ぬめぬめと絡みつき、吸いついて離れない。<
38度も熱があってもお構いなしだ。まる2日もそんな状態が続いた。
マミが体から離れるたびに、意識も朦朧となりながら逃れようと藻掻いては、湿った蒲団に連れ戻された。
殺される、と思った。
小便をしたついでにトイレに立て籠もることも考えたが……。
「オシッコするの手伝ってあげる」と、マミがトイレの中までついてくるのだった。
そんなマミにも、慈悲の心がわずかに残っているのか、もしくは死なれては困ると思ったのか、3日目になっても熱が38度から下がらないのを見ると、「お薬を買ってくる」と言って出掛けていった。
うつらうつらしている耳もとにそう囁いて出ていったのであるが、玄関のドアが閉まる音を耳にした途端、ハッと気がついた。
――逃げるんなら今や!
大急ぎで着替えて必要最小限のものをスーツケースに詰め込むと、タクシーを拾って、会社へ向かった。オフィスの奥に、簡易な仮眠室があった。そこに泊まらせてもらいつつ、今後の計画を立てようと考えたのだ。

あと1日休むことになっていたから、急にオフィスに、しかも大きなスーツケースを携えて現れた彼に、皆、戸惑った反応を見せた。
そこで、貴司さんは、まずは上司に、一緒に住んでいる女性とトラブルになって、やむなく家から逃れてきたのだと説明した。
もっと上手な嘘を吐けるものなら吐きたかったが、頭が回らず、また、恋人と同棲していたことが社内で知られてしまっても、背に腹は代えられない、それどころではないという気持ちだった。
「なるべく早くなんとかしますから、どうか今夜は仮眠室に泊まらせてください」
「それは構いまへんが、ほんまは何ぞ犯罪に巻き込まれでもしたんとちゃうん? いや、凄いやつれようやし、顔つきが尋常やないからね?」
「いいえ、そういうことでは……」
「あ、そう。仮眠室をつこうてくれてもかまへんし、私生活については関知しぃひんけど、はよ解決してな。喧嘩したなら、逃げ出すんやのうて、話し合わなくちゃ」
「それが、全然、話が通じないんです」
「じゃあ、信頼できる人を間に入れたらええんちゃうかな? 相手が何もんにせよ、それしかないよ?」
このとき貴司さんは、マミと別れようとはっきり決意した。
再び元の独り暮らしに戻るのだ。完全に関係を断ち切るためには、あのマンションを解約して、他所に引っ越した方が賢明だろう。勝手に解約手続きを進めてしまう手もある。マミは元のアパートを引き払ったが、まだ住民票を動かしておらず、不動産屋にも役所にも、彼女を同居人として届け出ていなかった。
とは言え、あまり強硬なことはせず、部屋から出ていくように穏やかに説得した方がいい。と、なれば、確かに上司の言うとおり、冷静な第三者に間に入ってもらうのが得策かもしれない。
そこで思い浮かんだのが、ホスト時代の先輩だった。
「先輩も元ホストやけど、かなりやり手で、引退後は飲食店を何軒か経営してました。引っ越してから間もない頃に何の気なしに近所のバーに入ったら、先輩がたまたま来ていて、ここもうちの店だと。せやから、マミと同棲するまでは、ときどき飲みに行ってましてん。いっぺんだけ、マミを連れていったこともあって……」
つまり「先輩」はマミと面識があった次第だ。それに彼は、頭が良いばかりでなく、温かな心の持ち主だった。
「昔の仲間とは距離を置きたいと思っていたのですが、先輩だけは特別でした。また会えるようになったことが嬉しかったし、先輩の方でも、何ぞあったらいつでも相談に来いと言ってくれたんです。そういうわけで、きっと話を聞いてくれると思って、会いに行きました」
貴司さんが期待していたとおり、先輩はマミとの別れ話に立ち会うことを快諾してくれた。
それが逃げ出した当日の木曜日のこと。
その晩は会社の仮眠室で寝て、金曜日は仕事を終えると先輩にあらためて相談に行きがてら、店に泊まらせてもらった。
面白いことに、マミの元を逃げ出した途端、ストレスから解放されたせいか、みるみる体力が回復して、たった1日で風邪が治ってしまった。
一方、マミは、貴司さんが逃げてから2、3時間後には、会社に電話を掛けてきた。貴司さんは、電話に対応した上司が、自分がまだ病欠中だと嘘をつくのを、そばで聞くはめになった。

「身が縮む思いやった! このままでは、せっかく入れた会社を辞めることになる。そう予感しました。上司は親切で部下思いな人で、社内には僕の修羅場を面白がる雰囲気もありましてんけど……今だけのことだっちゅう気がしぃ、はよなんとかせないけへんと焦りました。せやから、もう、さっそくその日のうちに先輩に電話で話をしたんです。あのときは藁にもすがる思いで……先輩にだけは、マミの異常な性欲や、セックスを無理強いされていたことを告白しました。ええ、思い切って、あけすけに。もちろんごっつ恥ずかしかったんですけど、頼み事をする以上は正直にならなくては、と思って……」
先輩は、貴司さんから話を聞くと、マミのタレントのようなルックスを思い返したのだろう、「人は見かけによらへんもんやな」と呆れていた。しかし、すぐに「情が濃すぎる女だったんだ」と彼なりに解釈して、こう言ったのだという。
「まるで安珍と清姫みたいやな」
安珍と清姫の伝説では、清姫は安珍に夜這いを掛け、安珍が逃げる。
だから先輩は連想したのだろうが、それを聞いた途端、貴司さんは、交わっているときのマミの肌触りを思い出した。と、言うのも、伝説では、安珍に裏切られたと知って川に身を投げた清姫の怨霊が、大蛇に変じるのだ。
マミは体温が低く、交わりはじめるとすぐに肌が冷たい汗にヌラヌラと覆われはじめた。求められることが苦痛になってからは、その皮膚の感触から、爬虫類をしばしば連想したものだった。
まだ全身に生々しくマミの記憶が刻まれている。
安珍は無惨な最期を遂げる。大蛇と化した清姫は、安珍をどこまでも追う。そして、道明寺の鐘の中に隠れた安珍を情念の炎で焼き殺す。
貴司さんは言い知れぬ寒気を覚えた。
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