同じはずのSEX経験人数、女より男の方が多いのはなぜ? “統計のウソ”と隠れた差別を東大教授が指摘

ハイパースカトロジスト(超糞便学者)としても知られる稀代の哲学者・三浦俊彦(東京大学教授)が、世の中の“ウンコな正論”を哲学的直観で分析する【超スカトロジスト時評】――

三浦俊彦教授

 『図解雑学 パラドクス』(ナツメ社)という本をパラパラ見ていて、「ああ、思慮が浅いな……」と思いました。「統計のウソ」と題して、「現代の性の乱れをセンセーショナルに報道する、いかにも興味本位のテレビ番組」を題材にしています。その番組によると、「日本人の生涯の性交渉の相手の数」は、男性が平均10人、女性が平均3人。戦後生まれに限ると、男性が13人、女性が8人だと。この数字について著者は、「これは一瞥してでたらめなデータだとわかる」と批判します。

「……論理的におかしいのだ。例えば、男女が10人ずつ、閉じた世界で一定期間、共同生活をしたとする。この間何人の異性とつきあったかの平均を男女別に出せば、2つの平均値はピタリと一致するはずである。……みんなが正直に申告すれば、男性と女性の平均値は当然一致する。テレビの例は閉じた系でなく、かつ、現実社会の男女数は正確に半々ではないが、10人と3人というのはひどすぎる」(同書、p.92)

 「ひどすぎる」のは著者自身の方でしょう……。皆さんどう思いますか?

 著者は、「日本人の生涯の性交渉の相手の数」と書いています。テレビ番組でもそう述べられていたのでしょう。であれば、男女で経験人数が大きく違うのは当り前です。世界全体で統計をとっても同じ結果になるでしょう。女性よりも男性の方が、「生涯の性交渉の相手の数」ははるかに多いはず。「男性と女性の平均値は当然一致する」などということはあり得ません。

画像は「getty images」より

 どうしてでしょう? 5秒以内にわからなかった人は、ヤバイかもしれませんよ。

 答えを言いましょう。著者は、性交渉のペアとして、異性カップルだけを想定している。同性カップルを考慮に入れていない。もし「ヘテロに限定した調査」だったなら、そう書くべきでした。但し書き無しでヘテロ限定と読ませるのは、同性愛者差別にあたりますね。

 この本は2005年出版。今ほどLGBTキャンペーンが盛んでないとはいえ、日本でレズビアン&ゲイパレードが始まって10年以上たった頃。同性愛というお馴染みのケースを無視するとは驚くべきことです。そもそも平均人数に差があったという統計結果なのだから、差が出るような解釈をとるのが当然でしょう[1]。無理に曲解したうえで「ウソ」を指摘するとは……自作自演もいいところです。

[1]「差が出るような解釈」は他にもある。たとえば、「男性は風俗店での性経験を勘定に入れ、風俗嬢はそれをビジネスと捉え性経験にカウントしていない(あるいはセックスワーカーは調査対象外)」という可能性。

プレスリリース入稿はこちら サイゾーパブリシティ