あの伝説的カフェ「新宿・BERGベルク」の風景を石丸元章が詩で表現! ひとつの街をテーマに短編小説を執筆する意欲シリーズ「ヴァイナル文學選書」がアツい!

 もともと、店内でヴァイナル文學選書の朗読会を開くなどの縁があったこともあり、ベルク側もこの提案を快諾。迫川さんは『ベルクの風景』のために、たくさんの写真を撮り下ろした。写真では店内、料理、厨房など、ベルクの様々な面がとらえられている。

 詩もベルクの様々な面を描いた内容となっている。今回掲載された詩は、すべてベルク内で書いたものだと石丸さんは語る。

石丸元章さん(撮影:迫川尚子さん)

「自分の子供を初めてベルクに連れていった日曜日の朝に書いた詩もあれば、友人が死んだお通夜の夜に家に帰りづらくて立ち寄ったときの詩もある。たまたま飲みにいった普通の日の詩もある。いろんな気持ち、いろんな状態のときにベルクを訪ねてるけど、ターミナルってそういうことだよね。いろんな人が行き交う姿を、ベルクを定点にしたら書けるかなとも思った」

 いまだ収束のきざしが見えないコロナ禍だが、『ベルクの風景』にはコロナ禍の日々について書かれた詩、そしてウイルス対策として縮小した形態で営業を行なっていたベルクの写真も収められている。

 その詩「この渦中のこと」から一節を引用しよう。

「ある感染の午後に──

 帰ってきて墓地に座った。そこは新宿の果ての小さな椅子席で。しかしそこでは鳥が鳴き、蜜蜂が飛び交う。夏の枝が地下の風に揺れる。土を踏み締めて歩く音。ここがベルクじゃないか。それぞれが持つ60センチの所有地。5万5千の観客が。それぞれの労働歌を熱唱している」

ベルクの店内(撮影:迫川尚子さん)

 このように石丸さんの目を通した“ベルクの風景”がつむがれている。石丸さんが実際に立ち会った、早朝のベルクの開店準備の様子を生き生きと描く「地下に昇る太陽」では、ドキュメンタリー的な味わいも楽しめる。

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