「#UD」検索が招く想像を超える恐怖とは!? 振り込め詐欺の“受け子”になった男が見た地獄
検索を経てカツヒサが参加したのは、受け子の組織のようだった。ようだった、というのは結局のところそういった組織では、リクルーティングを担当した相手としか直接にコンタクトできないため、細部がわからないのだ。面接は指定された公園のベンチに座って、携帯電話での通話で行った。会話の相手はどこかでカツヒサを見ている様子だったが、カツヒサは結局どこの誰と話をしているのかわからないうちに採用になった。
以前の出し子の組織にいたときは、リーダーと3人の出し子がひとつの車で移動していたので、それなりに行動も組織らしいものだったが、今回の受け子の組織ではカツヒサがわかっているのはリーダーの携帯番号と声だけだ。その携帯番号も「とばし」と呼ばれる他人名義の携帯だろうから、結局のところカツヒサは組織のことは何もわかっていないことになる。
それでも指示通りに受け取った金品なりカードなりを運べば、普段のバイトの半月分ぐらいの報酬が手に入る段取りになっていた。「なっていた」と表現が過去形なのはこのような事情からだ。
受け子となって最初の指令は、「別の受け子が入手したバッグを回収する仕事」だった。公園のベンチに置かれたバッグを回収して、指定のコインロッカーに入れ、そのキーをまた指定された場所に置いて帰る……というのがリーダーからの指示だった。
なんだかまどろっこしい仕事手順にも思えたが、おそらく騙しとる金額が高額なのだろう。だから間にいくつかクッションを置くわけで、カツヒサは自分がその歯車のひとつなのだろうと勝手に納得した。
その日のことをカツヒサは今でもよく覚えている。6月だというのにやけに暑い日で、外出するだけで体力を消耗しそうな日中だった。午後1時半の郊外の住宅地の公園は、照りつける強い日差しのせいで遊んでいる親子連れすらほとんどいない。にもかかわらず、公園に入って指定のベンチに向かう途中、なぜか新聞を読んでいる中年男性と、屈伸運動をする若いアスリートっぽい男が目に入った。その違和感でその場を立ち去るべきだったとカツヒサは思う。
広々とした公園の中央の水飲み場に近いベンチには、事前に言われたとおり小さな手提げバッグが目印のペットボトルと一緒に置いてあった。カツヒサはそれを手に持った。意外なほどにずっしりと重かった。一瞬「ダンベルでも入っているのか?」と思ったが過去の経験から「いや金の延べ板だな」とひらめいた。そのバッグを手にカツヒサがもと来た道を戻り始めたときだった。
前からジョギングしてきたアスリートが、ふいにカツヒサの前で足を止めた。瞬間的にカツヒサは、バッグを捨てて逃げようと振り向いた。カツヒサの背後は電気工事の作業員の恰好をした二人の男に固められていた。別の方向からは新聞を読んでいた中年男性がゆっくりと近づいてきた。
「わかるね。一緒に来てもらうからね」
アスリートの声を呆然と聞きながらさらに視界の前方から制服警官が2名こちらに走ってくるのが見えた。おとなしく手錠をかけられると背後で作業員が、
「確保ぉ、確保ぉ」
とレシーバーのようなものに向かって叫んでいる。振り込め詐欺犯の逮捕に結構たくさんの警察官が関わっているんだなとカツヒサはぼんやりと考えながら、警官に促されるようにパトカーに乗った。
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2024.10.02 20:00心霊「#UD」検索が招く想像を超える恐怖とは!? 振り込め詐欺の“受け子”になった男が見た地獄のページです。殺人、詐欺、誘拐、怖い話、王山覚、ハッシュタグ、受け子などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで