人類史上、後にも先にもいない不死の男の謎! 今も生きるニコラス・フラメル
ニコラスは二つ返事で男からこの本を買取った。もちろん売るためではなく彼自身が読むためである。
「アブラハムの書(Book of Abraham)」というタイトルの古びた表紙のその本は、不可解なシンボルとデザインの物々しい装丁で、本をを開くと「王子、司祭、レビ、占星術師、哲学者であるユダヤ人のアブラハム」によって書かれたものであることがわかった。
さらにページをめくると、本書は読むに値しない人間が読むと呪われるという警告が記されており、さらに謎めいたテキスト、デザイン、イラスト、図、記号のページが続き、本文は古代ギリシア語や古代ヘブライ語をはじめ当時のニコラスが理解できない言語で書かれていて内容を把握することはまったくできなかった。
しかしイラストや図を見る限り、この本は錬金術に関係したものであることはすぐにわかった。そしてこの日から、この本を解読すべくニコラスの執拗な学究の日々がはじまったのである。
伝えられるところによると、ニコラスはこの「アブラハムの書」の解読を人生を賭して行うワイフワークであると位置づけ、翻訳と解読に自分が費やせるすべての時間を投じ、解読の手掛かりになるものならパリ中を探しまわって何でも手に入れたのだった。
■スペイン旅行で転機が訪れる
解読作業に21年を費やした時点で、本の内容のアウトラインが徐々に浮き彫りになってきたものの、それでも完全に理解するにはまだほど遠い状態であった。
業を煮やしたニコラスは、当時多くのユダヤ人亡命者が住んでいたスペインへの旅に出ることにした。スペインにいるユダヤ人たちから何かヒントが得られるのはないかと考えたのだ。
スペインへの旅行中にニコラスはユダヤ人の学者であるマエストロ・カンチスという賢人に接触することができた。
カンチスはこの本はずっと前に前の持ち主が紛失したものであり、書かれている秘密のために運命づけられた人の手に渡るものであると説明した。
賢人はニコラスが持ってきた「アブラハムの書」の数ページを翻訳した後、残りの部分を手伝うために彼と一緒にパリに戻ることに同意した。不運なことにカンチスは翻訳を完成させる前に亡くなってしまったのだが、この時点のニコラスは自分で解読を続けるのにじゅうぶんなスキルを獲得していたのだった。
伝えられるところによると、ニコラスは翻訳を完了するのにその後3年を費やし、その過程でその強力な魔法の力を解き放ったといわれている。
その1つは錬金術である。彼は錬金術を習得し伝説の“賢者の石”を作る秘訣を学んだと言われている。錬金術は鉛や水銀などの卑金属を金などの希少金属に変える秘伝の技法だ。
興味深いことに、この時期になるとニコラスは突然、不可解なほどに富裕になっていたという。彼と彼の妻はさまざまな慈善事業に巨額のお金を寄付するようになり、教会にも寄付をするようになっていたのだが、このお金のすべてがどこから来ているのか誰にもわからなかった。フランスのシャルル6世は、突如富裕になったニコラスを疑い職員に財政状況の調査を命じたが、この富を説明できるものは何も見つからなかったという。
そして住民台帳の記録上はニコラスは1418年に88歳で亡くなり、それからはニコラスの話をする者は誰もいなくなる。
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2024.10.02 20:00心霊人類史上、後にも先にもいない不死の男の謎! 今も生きるニコラス・フラメルのページです。不老不死、魔術、ハリー・ポッター、仲田しんじ、魔法、賢者の石、錬金術、ニコラス・フラメルなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで