【実録オカルト事件簿】あの「早稲田大学」運動部の学生を悩ませた“高田馬場の女の霊”! 闇に葬られた殺人事件の顛末と天狗倶楽部!

(神ノ國ヲ) 普段から幽霊などを一切信じないと豪語していた大村が震えながら言うので、大井も驚いた。騒ぎを聞きつけた他の学生たちもぞろぞろ出てきて、まさか、あの大村が……と驚いた。

 すると寮生のために食事をつくりに来ていた女性が言う。「やっぱり、そうでしたか。この家は、もともと若松のほうにあった呪いの家ですよ」と。乳母が誤って赤子を落としてしまい、結果死んでしまった。病んだ家主は狂ってしまって、乳母を井戸に突き落とし殺してしまった。表面上は「事故」扱いながら、実際は……と。以来、その家には乳母の霊が出るようになり、家は放棄され、見かねた大工が移転・改築したのが、この学生寮だと。この事件の後、乳母の霊は出なくなったそうですが、哀しい話ですね。

――凄惨ながらも哀しい話ですが、本当にあった事件なのでしょうか……?

(神ノ國ヲ) この手の話は、確認するのが難しいんです。戦前の出来事、いまから百年近く前の事件ですしね。しかし、調べてみると、件の大村と大井について、記録が出てきたんです。

 実は、大村隆行は「天狗倶楽部」のメンバーでした。天狗倶楽部は、明治から昭和初期にかけて野球と相撲を中心にアマチュア・スポーツの振興団体でした。中心人物は、あの冒険小説家の押川春浪です。大村は、この天狗倶楽部のメンバー、早大野球部主将として、1910年と1911年にアメリカ遠征へと向かいました。このメンバー表の中に、ピッチャーとして大村の名前があり、ファーストとして「大井斉」の名前があります。ほぼ間違いなく、幽霊と出会った大村と大井です。学生野球の父・飛田穂洲の愛弟子として、卒業後、大村は和歌山県などで活躍し、学生野球の発展に尽力したようです。

http://teto.nekonikoban.org/wakayama/wakayamatyu1.html

――なんと、では、その大村選手が経験した逸話なんですね!

(神ノ國ヲ) 日本の野球史が戦前の哀しい事件と交錯するところに、大村と大井がいたのです。これらの事実からも、大村と大井の報告の信憑性はかなり高いと言わざるを得ません。そして、気付きませんか……? 実は、大村と大井が怪奇に遭遇した諏訪の森は、戸山公園の目と鼻の先です。これは偶然の一致でしょうか。発見された100体にも及ぶ人骨、戦中の人体実験、戦前の殺人事件と幽霊目撃…。そもそも高田馬場から早稲田大学のあたり一帯は、古墳が多く、それゆえ冨塚=十塚=戸塚と呼ばれた土地でもあります。つまり昔からの埋葬地なのです。戦前から現在も頻発する、あたり一帯での怪異と事件、事故は本当に無関係なのでしょうか? これらを引き起こしている原因が、何かあるように思えてなりません…。

文=神ノ國ヲ

学術論文からオカルト記事まで。
京都大学の博士課程に所属中。
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