ナショジオも認定!呪われた世界遺産ワット・プラシーサンペット

――タイ在住歴20年の私バンナー星人が、タイ社会では馴染みの深い、妖怪、幽霊、怪談、呪術、占い、迷信といったものに光をあて、日本人の目には触れることが少なかったタイの怪奇世界に皆様をお連れします。

 バンコクからでも日帰りで行ける世界遺産の町アユタヤ――歴史ある街での遺跡巡りは、今も昔もタイ旅行の定番である。アユタヤ王朝時代から残るそれらの遺跡に一歩足を踏み入れると、外界とは異なる空気の流れが感じられるだろう。侘び寂びを好む日本人の中には、アユタヤ王朝の栄枯盛衰の物語に思いを馳せて感傷的な気分に浸る、そんな方もおられるのではないだろうか。そしてあなたは、何百年もの時を経ていまだにそこに残るレンガ片を手にとり、記念に持ち帰ろうとするかもしれない。それがあなたにどんな災いをもたらすかも知らずに……。

 今回、紹介するアユタヤの「ワット・プラシーサンペット」は、雑誌「ナショナル・ジオグラフィック」呪われた場所ランキング-アジア編-で堂々のTOP10入りを果たした遺跡だ。ワット・プラシーサンペットは1491年、ボロムトライロッカーナート王時代に建立された寺院で、東西に並ぶ3基の仏塔が非常に印象的だ。王宮内の特別な寺院であり、王専用の仏教儀式を執り行う重要な場所として機能していた。他の一般寺院と大きく異なる点は、僧侶が常駐していないことだ。

 この3基の仏塔には、ボロムトライロッカーナート王とその王子たちの遺骨が納められており、仏塔の東側には後に、純金に覆われた仏像を安置した本堂も建てられた。しかし、栄華を誇ったこの寺院も、1767年のビルマ軍の侵攻でことごとく破壊されてしまった。随所に見られる首のない仏像からも、その攻撃の激しさが伝わってくる。そんな激動の物語を持つワット・プラシーサンペットにまつわる怪談話を早速紹介することにしよう……。

「私がまだ子供だったから、約40年前のことですかね。そのおばさんが言うには、空が暗くなりかけていたから6時ぐらいだったそうです。ワット・プラシーサンペットのほうから、王朝時代を思わせる楽器の音色が聞こえてきたと思うと、次には宮廷料理の匂いまで風に乗って漂ってきたらしいんです。その他にもね、アユタヤ時代を思わせる衣装に身をまとった女性が遺跡の中を歩いているのも、よく目撃されたらしいですよ」(遺跡近隣住人談)

 「私たち、見たんですよ。遺跡を囲むレンガ壁の上にアユタヤ時代のような衣装に身をまとった女性が座っていたんです。もちろん遺跡で撮影していたので、そんな幻影を見たのかもしれません。でもね、私以外の撮影チームスタッフも同時に同じ女を見たってやっぱりおかしくないですか。それに、見えたその女の特徴はみんな一致してたんです。服装とか、首がないとか……」(ドラマ撮影クルー談)

 アユタヤの遺跡内には何百年経過してもなおそこに残るレンガ片が随所に転がっている。風化した独特の色合いが余計に、見る人の心にロマンを掻き立てるのだろう。その思いを心に留めようと、記念品として現地のものを持ち去る人もあとを立たない。しかし、軽い気持ちでとったその行動が、後々深い後悔を残す場合もある。

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