トラウマに悩む女が大暴走する映画『マヤの秘密』の“狂気を超えた深み”とは!? 今野杏南と阿部憲仁教授が語り尽くす!
■原題に秘められた真意とは?
阿部 では、ここで今野さんに質問します。この映画の邦題は『マヤの秘密』ですが、原題は『The Secrets We Keep』となっていて、直訳すると「私たちが抱える秘密」という意味です。では、「We=私たち」とはいったい誰のことでしょうか?
今野 マヤとルイスの夫婦が、トーマスという人を拉致して地下室に監禁しているのに、周囲にはできるだけ平然と振る舞っているという、そのことでしょうか。あとは、マヤとルイスが今まで仲が良い夫婦のように装いながら、じつはずっと本心では向き合うことができていなかった部分でしょうか?
阿部 それで正解なのですが、もう一つ、製作者が込めた意味があるはずです。映画の終盤のシーンにヒントが隠されています。
今野 地域のみんなが集まって、外でパーティーか花火大会(?)のようなことをしているシーンがありましたよね。
阿部 あそこで、なぜコミュニティの人たちを大勢、わざわざ登場させる必要があったのか? この映画のストーリーに絡むキャラクターは基本的に3人ですから、本来なら不要なシーンだと考えることもできます。でも、あれを映すことで「私たちが抱える秘密」のもう一つの意味が見えてくるんです。
今野 あっ、この小さなコミュニティでは、誰もが秘密を抱えて生きているということですか!
阿部 でも、それは小さなコミュニティだけのことなんだろうか? 戦争があって、ヨーロッパからたくさんの人たちがアメリカに渡ってきました。みんな、誰しも心に傷や秘密を抱えながら、それでも幸せそうにして生きているというアメリカ社会やヨーロッパ社会、ひいては、日本社会も含めたより大きな社会全体のことや背景まで暗に示しているのでしょう。
今野 そうか……。「私たちが抱える秘密」っていうのは、映画を見ている私たちのことでもあるんですね。
先生との対談が面白くてまだ全然話し足りない……(笑)! それにしても『マヤの秘密』はただのサスペンス映画ではなくて、登場人物それぞれが抱えているトラウマとの葛藤や、それとの向き合い方など、本当に深く考えさせられるテーマが散りばめられた深い映画でしたね。
阿部 やはり本作が一番訴えたかったことは、「心に抱えたトラウマに蓋を続けたまま人間は生きていくことはできない」ということじゃないでしょうか。ぜひ皆さんにも見てもらい、自分自身の過去とも向き合ってみてほしいですね。
いかがだろう。阿部先生が語るようにトラウマを心の奥に閉じ込めたまま人間は幸せになれないとすれば、本作でマヤが取った行動はたとえ乱暴であっても自らの人生を必死に生き抜こうとする、再生の物語であったと考えることもできる。決して安直なサスペンスに陥らない、『マヤの秘密』の魅力は「深い分析を要する」という点に集約されている。そして、絶望の中でも微かな希望がきっと心に灯る――それこそが本作の真髄なのだ。
★『マヤの秘密』主演ノオミ・ラパスから日本に向けてメッセージ!★
『マヤの秘密』
監督・脚本:ユヴァル・アドラー 製作総指揮:ノオミ・ラパス
製作:ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ、エリク・ハウサム
音楽:ジョン・パエサーノ 撮影:コーリャ・ブラント
キャスト:ノオミ・ラパス、ジョエル・キナマン、クリス・メッシーナ、エイミー・サイメッツ
2020年/97分/アメリカ/英語/カラー/シネスコ/5.1ch /G
原題:The Secrets We Keep/日本語字幕:片野 佑介
配給:STAR CHANNEL MOVIES
© 2020 TSWK Financing and Distribution, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト maja-secret.com
Twitter @maja_secret
Facebook @majasecret
2月18日(金)、新宿武蔵野館ほか全国順次公開!
阿部憲仁(あべ けんじ)
桐蔭横浜大学法学部教授(国際社会病理)・全国篤志(刑務所)面接委員連盟理事。教育学博士(Ed.D.)。米国で学位取得・移民教育に従事後、全米のギャング・マフィア・白人至上主義・連続殺人犯・大量殺人犯等、数多くの凶悪犯との直接のやり取りを通し、日本の安全な家庭・社会のあり方を提言。また、平和活動家として2015年にノーベル平和賞に名誉来賓として召喚される。凶悪犯罪に詳しいDr.クリミナルマインド。著書に『無差別殺人犯の正体』(学文社)他。
※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。
関連記事
人気連載
“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】
現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...
2024.10.02 20:00心霊トラウマに悩む女が大暴走する映画『マヤの秘密』の“狂気を超えた深み”とは!? 今野杏南と阿部憲仁教授が語り尽くす!のページです。対談、トラウマ、今野杏南、阿部憲仁、マヤの秘密などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで