日本の「台湾有事シミュレーション」は売国級の稚拙さ! 弱点を中国に発信… 防衛の絶望的実態をジェームズ斉藤が解説
ジェームズ まず、軍というものは「政治目標を遂行するために軍事目標を設置して完遂する」のが任務です。つまり、最初に「政治目標」があって、次に「軍事目標」があります。
一方、政治家が判断するのは参戦するか、否かの判断のように、純粋に軍事レベルを超越したものです。攻撃するか否かも政治判断の場合がほとんどです。広島長崎の原爆投下の意思決定もトルーマン大統領が下していました。
──要は政治家が判断するのは戦争するか、しないかのようなものだけで、現実には幕僚長などの軍人が戦争を遂行するのではないですか?
ジェームズ 確かに作戦は軍人がやります。しかし、政策は政治家がやります。極端な例をあげると、アメリカのイラク戦争開戦時における議論で、ドナルド・ラムズフェルド国防長官が政策目標として短期決戦を主張し、米軍トップのエリック・シンセキ陸軍大将(ハワイ生まれの日系人)の大規模派兵論を強引に退けたことがあります。そのため、米軍は小規模派兵でイラクという巨大な国を占領する羽目になりました。これは政治家の要求に応じて軍が作戦計画を変更した例です。つまり、ラムズフェルドの政策目標がいかに暴論でも、真っ当な政軍関係では、政治家の掲げる政治目標が作戦目標の上に立つのです。
──ということは、戦争において政治家の政治目標、政治判断が最も重要だということですか?
ジェームズ そうです。戦争というのは究極には政治レベルで決まるのです。軍がめちゃくちゃでも政治レベルが優秀であれば、余程のことがない限り勝てます。スターリンも、ソ連軍は壊滅的な状態にありましたが、指導者が超優秀でしたので勝つことができています。いまのプーチンもそうです。露軍は被害が大きいですが、プーチンの指導力=大戦略レベルでのパワーで勝っています。政治家の任務は大戦略で勝つことです。そこは軍人にはできない仕事です。
ですから、政治家と軍との事前の調整は必要なのです。今回のシミュレーションのような机上演習もなくてはならないものなのです。ただし、公開はまったく必要なかったということです。
──文民統制の本質がやっとわかりました。
ジェームズ 日本はシビリアンコントロールを誤解している人が本当に多いと思います。軍人は暴走するから政治家や官僚が見張る必要があるという誤った認識しかありません。もっとも第二次世界大戦では実際に軍が暴走していますし、極左がそういう教育をずっとしてきているので仕方ないといえば仕方ないという部分はありますが。
しかし、だからといって、いまの国会議員に戦争指導者としての意識がなくていいということにはなりません。ちなみに、下の図は米国の国防総省などで使われる戦略の階層です。
政治家は上の2つ、Polital PolicyとGrand Strategyを担当し、軍はOperational Startegy以下を担当します。昭和の日本軍は、この戦略の階層すべてを担当して負けました。日露戦争時はこの戦略の階層を理解していたので政軍の棲み分けがなされ、勝ちました。同じ国でこのような違いが出た理由は、明治の帝国軍人はクラウゼヴィッツの戦争論を正しく理解し、明治天皇を、統帥権を有する大元帥とし、総理大臣をはじめとする政治従属を実践したのに対し、昭和の軍人は反クラウゼヴィッツになり、統帥権干犯問題や政治家の暗殺を引き起こし、政治を乗っ取ってしまったのです。
──こういうものを日本の政治家や軍人は知っているんですか?
ジェームズ 政治家は皆無です。繰り返しますが、そもそも彼らは自ら戦争指導者になり得ることを想定して選挙に出ていませんので。対して、自衛隊はトップであれば必ず知っていると思います。
しかし、自衛隊のトップは政治家なんかに戦争がわかってたまるか、といった態度でバカにしています。基本的には自衛隊に都合のいいことをOBを使って政治家に吹き込んでいるのが実態です。さらに残念なのは、自衛隊OBの多くは「米国が日本を見放せば、中国と同盟を組めばいい」と言う人たちが多くいます。純粋な軍事戦略的に言えば、強い国と同盟関係を結ぶのは鉄則ですが、中国と同盟を組むと言うことは様々な政治問題を引き起こし、政治レベルではなかなかあり得ない発想です。しかし、日本の政治家には親中派が多いのであっさり受け入れるかもしれませんが。
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2024.10.02 20:00心霊日本の「台湾有事シミュレーション」は売国級の稚拙さ! 弱点を中国に発信… 防衛の絶望的実態をジェームズ斉藤が解説のページです。中国、シミュレーション、自衛隊、官僚、台湾有事、文民統制などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで