ダホメ王国のアマゾネス部隊「アゴジ」とは? 実在した女戦士たちの過酷な訓練と驚愕の戦闘能力

 2022年9月に映画『THE WOMAN KING』が公開された。本作はアフリカに実在した女性のみで構成された軍隊についての映画である。女戦士という点では、映画『ブラックパンサー』(2018)の世界的ヒットを思い出す人もあるだろう。

 2022年7月には、続編『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』の公開が発表されたが、何を隠そう、この作品に登場する女部隊ドーラ・ミラージュこそ『THE WOMAN KING』にて描かれる実在のアマゾネス「アゴジ:Agojie」である。17世紀から20世紀の幕開けに実在した西アフリカの専制軍事国家ダホメに仕えたアゴジとは何者だったのか。

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19世紀フランスで製作された「アゴジ」のリトグラフ 画像は「Wikipedia」より

ダホメ王国

 まず「ダホメ王国」について語らなくてはならない。ダホメは現在のアフリカでいえば、ナイジェリアとトーゴに挟まれたベナンに位置する王国だった。17世紀に創建され19世紀のセネガルからのフランス侵入により滅亡した王国である。奴隷貿易を行う専制君主による軍事国家として周辺国からは恐れられた国だった。そのダホメの女戦士部隊こそ「アゴジ」である。

アマゾネス部隊アゴジの始まり

 アゴジ最古の記録は1729年に遡るが、さらに遡って国王が招集した女性だけのゾウ狩り部隊が起源だという説がある。または18世紀初頭、先王の戦死により王妹ハンベが一時的に摂政として王国を統治した際に女戦士部隊を組織し宮廷警護を任せたという口伝も確認されている。アゴジの起源は歴史の闇の中であるが、いずれにせよ、第9代ゲゾ国王(在位1818-1858)の統治下でアゴジは数千人規模の大部隊となったといわれる。

 ゲゾ王は、奴隷貿易のみならずアブラヤシの大量生産し、パームオイルの原料として欧米諸国に輸出し隆盛を極めた。欧米では奴隷貿易への反対が始まり、また欧米列強国によるアフリカの植民地化が日毎に進む時代に、アゴジはダホメ軍の正式部隊となった。背景には、貿易のための奴隷狩りによる度重なる戦争のため男性人口の減少があり、女性の社会進出の拡大があった。

ダホメ常備軍ア当時のゴジの日常

 そもそも当時、多くのアフリカ国家に常備軍はなかったといわれる。戦争が終われば軍隊を解散することは通常だった。それゆえダホメ常備軍の存在は、歴史的にも周辺諸国にとっても異常なものとして映る。ダホメ常備軍が男女問わず制服を着用していたことも、その特異性の証左とされている。

  ダホメ王国を描く、クラウス・キンスキー監督「Cobra Verde」1987年

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