生贄の子供に幻覚剤を与えて殺害…古代アンデス文明の儀式に新たな科学的発見
古代メソアメリカの文化では神に人命を捧げる人身供養が広く行われていたが、ペルーで見つかった首を斬り落とされた子どもの遺骸からは儀式の前に幻覚剤が与えられていた痕跡が見つかっている。
■生贄の子どもにサイケデリック植物が与えられていた!?
メソアメリカのアンデス文明のもと、紀元前100年~紀元後800年頃までペルー南部の海岸付近で栄えた古代文化である「ナスカ文化」では、人身供養の儀式で切り落とした子どもの頭部を“トロフィー”にする野蛮な風習があったとされている。
その残酷な儀式の犠牲になる子どもたちには、どうやら事前に幻覚剤の成分が与えられていたことが、今回新たに発表された研究論文で報告されている。“トロフィー”となった子どもの頭から引き抜かれた1本の髪の毛の成分を分析したところ、彼らが儀式の一環として斬首の前にサボテンなどのサイケデリック植物を食べさせられていたことが示されたのだ。
ポーランド・ワルシャワ大学をはじめとする合同研究チームが2022年10月に「The Journal of Archaeological Science」で発表した新しい研究では、ペルー南部の海岸近くで発掘されたナスカ時代の子どものミイラの髪の毛からメスカリンを含むサンペドロサボテン(San Pedro cactus)の成分が含まれていたことが報告された。また検出された成分には、一般的な精神活性物質であるコカインの原料となるコカの葉も含まれてた。
その強力な幻覚作用で知られているサンペドロサボテンは、メソアメリカの先住民文明によって伝統的な医学や儀式に使用されていたと考えられている。これに加えて、埋葬地ではさまざまな副葬品が発見され、それらには織物、陶磁器の壷、機織り道具、およびコカの葉を運ぶために使用される小袋(chuspa)が含まれていた。
生贄となった子どもが“トロフィー”と化す「斬首の儀式は、紀元前1800年の先土器時代 (Pre-Ceramic Period)から先コロンブス期の間のアンデス文明で広まった」と研究チームは説明している。
「トロフィーの頭は、ペルー南部の海岸に住んでいた人によるサンペドロサボテンの服用の最初のケースです」と、ポーランド・ワルシャワ大学のアンデス文明研究者、ダグマラ・ソチャ氏は語る。
「トロフィーの頭にされた犠牲者の一部が、死ぬ前に覚醒剤を与えられたという最初の証拠でもあります」(ダグマラ・ソチャ氏)
■交易ネットワークとサイケデリック植物の使用
「どれだけの人々が“これらの植物”にアクセスできたかを調べるのは非常に興味深いことでした。またこれらの古代植物の取引経路を発見したいと思いました。たとえばコカの葉はペルーの南海岸では栽培されていなかったので、彼らはペルー北部かアマゾン地域から運び込まなければなりませんでした」(ダグマラ・ソチャ氏)
研究チームは薬物使用の年代を追跡することによって、紀元前100年から紀元後450年まで半世紀以上のスパンで広範な貿易ネットワークを追跡して特定することに一定の成果をあげた。
さまざまなニーズに合わせ、それぞれの文化が各種の植物をどのように使用したかを理解することで、貿易ネットワークの解明に繋がったという。以前の研究では、サイケデリック植物がペルーの海岸からアマゾン奥地まで長距離に渡って取引されていたことが示されている。幻覚作用のあるサイケデリック植物のレクリエーションでの使用は限られており、むしろ使用法は医療目的または儀式目的のいずれかで、非常に具体的であったということだ。
これらの植物がナスカの文化で、薬用または儀式用であったにしてもどれほど頻繁に使用されていたのかについては、まだよくわかっていないという。
死の儀式への恐怖を取り除き、さらには死を恐れなくするためにこれらのサイケデリック植物が与えられたのだろうか。とすればそれは“最後のご馳走”だったのか? 古代メソアメリカのドラッグ流通網の解明が着実に進められている中にあって、今後どのような発見がもたらされるのか大いに気になるところだ。
参考:「Ancient Origins」ほか
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2024.10.02 20:00心霊生贄の子供に幻覚剤を与えて殺害…古代アンデス文明の儀式に新たな科学的発見のページです。アンデス、生贄、ナスカ、ドラッグ、人身供養などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで