記憶は脳のどこにどのように保存されるのか? 感情と記憶の深い関係
記憶は脳を構成する要素の1つだ。「赤いストーブの火は熱いから触らないように!」というように、私たちの安全を守ってくれたり、私たちのアイデンティティや人生についての物語の基礎を形成している。
では、脳はどのようにして記憶を保存し、取り出しているのか。
最も単純な答えは、人間の脳は新しい記憶を得るたびにその形を変えていくというものだ。これは脳細胞と脳細胞の間にある小さな隙間であるシナプスの働きによって起こる。脳細胞(ニューロン)の電荷が変化すると、シナプスを介して神経伝達物質と呼ばれる化学物質が放出される。神経伝達物質は反対側にある神経細胞に取り込まれ、その細胞の電気的変化を引き起こす。
南カリフォルニア大学の神経科学者ドン・アーノルド氏は、「最終的に、記憶は回路で符号化され、シナプスはこれらの回路を形作るための手段に過ぎません」と話す。記憶が作られたときに脳内では、記憶を符号化する新しい回路が作られるのだ。
ある神経細胞が別の神経細胞を刺激し続けると、その結びつきが強まり、時間が経つにつれてお互いを刺激し合うことが容易になる。一方、ほとんどコミュニケーションをとらない神経細胞同士の結びつきは弱くなる。脳は神経細胞のネットワーク間の結びつきを強めることで、記憶を保存することができる。
記憶は脳のどこに保存されるのか?
人間の記憶は、脳のいくつかの部位に保存されているとされる。最も重要なのはタツノオトシゴが丸まったような形をした海馬だ。これは脳の奥深くにあり、最初の記憶形成に重要であり、短期記憶から長期記憶への記憶の移行に重要な役割を果たすといわれている。
短期記憶は、わずか20〜30秒程度で消えてしまう。例えば、新しい電話番号をダイヤルするまでの時間は覚えていても、その番号を何度もリハーサルしない限り、その短期記憶を形成していた神経回路は一緒に活性化しなくなり、記憶は薄れていく。
何度も思い出そうとしたりすると、海馬が働いて回路が強化される。時間が経つにつれて、長期記憶は大脳新皮質に転送されていくそうだ。大脳新皮質は、私たちの意識経験の大部分を担っている、外側のしわの多い部分だ。ただし、2017年に「Science」誌に発表された研究では、完全に転送されるわけでなく、長期記憶の残骸も海馬に残ることがわかっている。
そして、人間の脳のアーモンド型の領域である扁桃体も、記憶に一役買っている。アーノルド氏らは、3月に「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌に発表した研究で、魚が光と痛覚を関連付けることを学習すると、淡蒼球という脳領域の一部で新しいシナプスが発生し、別の部分でシナプスが失われることを発見した。アーノルド氏によれば、魚の淡蒼球は扁桃体に似ており、今回の研究でシナプスが強化された部分には、痛みを伴う刺激の処理に関与するニューロンが多く、一方、ポジティブまたはニュートラルな刺激を処理するニューロン間のシナプスを失っていたという。
関連記事
人気連載
“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】
現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...
2024.10.02 20:00心霊記憶は脳のどこにどのように保存されるのか? 感情と記憶の深い関係のページです。記憶、脳、シナプス、ニューロンなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで