“悪い予感”で動き始める脳の領域特定! ネガティブ情報を検索してしまう“ドゥームスクローリング”研究に注目
ネガティブな情報に接した時、無視できる場合もあれば不吉な胸騒ぎがする場合もある。この“悪い予感”はどこからくるのか。最新の研究では不気味なニュースを見た時に無視するのか、それとももっと調べようとするのか、その態度を決定する脳の活動領域を特定していて興味深い。
■“ドゥームスクローリング”が蔓延している!?
ネット全盛の時代を迎えて、我々は人類史上かつてなかった“情報の洪水”にさらされている。
もちろん情報の洪水の中には有益でポジティブなものもあれば、ネガティブで不安を引き起こすものもある。そしてどちらも、気になれば検索してさらに詳しく調べることができる。
悪いニュースに胸騒ぎを覚えながらスマホの画面を際限なくスクロールする行為のことを「ドゥームスクローリング(doomscrolling)」と最近になって命名されていて、そしてこの行為がこの2年のコロナ禍も手伝って、一般に広く蔓延しているというのだ。
「人々の脳は情報化時代に対処するための十分な準備が整っていません」と、ワシントン大学医学部の神経科学者イリヤ・モノソフ准教授は述べている。
「人々は常にニュースをチェックし、チェックし、チェックしていますが、そのいくつかは全く役に立ちません。現代のライフスタイルは、不確実で絶えず変化し続ける世界で生き残るために、何百万年もかけて進化してきた脳の回路を再構築している可能性があります」(イリヤ・モノソフ准教授)
ドゥームスクローリングに駆り立てられる人々には何が起こっているのか。同大学医学部の研究チームが先ごろ神経科学ジャーナル「Neuron」で発表したサルを使った研究で、ネガティブな情報に際して無視するかさらに調べるのかの態度を決定する脳の神経回路が判明。脳活動をモニターすればドゥームスクローリングをするのかしないのかがわるというのだ。
■ネガティブな情報に接すると態度が2つに分かれる
ネガティブで不吉な結果を招く可能性のある情報についてどのような態度をとるのか、そのメカニズムを探るために研究チームは2匹のサルを使って実験を行った。
かつての実験では、サルがエサなどの報酬を受け取る可能性のあるポジティブなサインが出された時、サルはほぼ確実次に出されるサインに注目することが報告されていたが、今回はネガティブな事象に関しての態度について行われた。
すると、ネガティブな事象についてのサインでは、興味深いことにサルは人間と同じように次のサインに注目する個体もあれば、無視する個体もあったのである。つまり情報がネガティブなものであった場合、その後の態度が分かれるのである。
ネガティブな出来事についての追加情報を求める態度は、ポジティブな出来事について一貫して同じ態度をとっている動物の間でさえ、枝分かれした道に進む可能性があることがわかったのだ。
この時のサルの脳の神経活動を詳しくモニターすると、前帯状皮質(anterior cingulate cortex)がポジティブな可能性の情報と、ネガティブな可能性の情報を別々に処理していることが示された。
そして一方で腹外側前頭前野(ventrolateral prefrontal cortex)は、追加情報を求めるのか、それとも無視するのかというサルの行動反応を決定していることがわかってきたのである。
研究チームは不確実性の根底にある神経回路を理解することは、不安や強迫性障害など、不確実性に耐えられない状態にある人々にとって、より良い治療法の開発の第一歩であると今回の研究の意義を説明している。
わずかずつではありながら、こうして脳のメカニズムを解き明かす研究が精神医療分野に及ぼす影響は大きい。研究のさらなる進展に期待したい一方で、こうした脳の働きが特定されることで知らないうちに検索手順をコントロールされる世の中がくるかもしれない危険を感じておくべきだろう。
参考:「India.com」「Washington University」「UPI」ほか
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