神楽坂周辺に出没する妖怪「すじかぶろ」とは? 韓国料理店がヤバいことに!
かつて都内でも有数の花街として賑わいを見せた神楽坂。近年この街では、遊女の見習いが妖怪化した「すじかぶろ」らしき存在による怪異が多数報告されている。とある密教僧は、お祓いのために心霊現象が止まらなくなってしまった飲食店を訪れた際に、この妖怪の特徴である”長い爪”によって腕に3本の深い引っ掻き傷を負っている。
”池に棲む”と伝えられているようだが神楽坂に池はなく、その目的も依然として不明なままだというーー。
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※ こちらの記事は2020年1月11日の記事を再掲しています。
東京・神楽坂で今、妖怪が跋扈しているらしい。その名は妖怪「すじかぶろ」。遊郭の見習いとして働いていた今の小学生くらいの少女が妖怪化した存在だ。全身はウロコに覆われ、口には牙、手足に生えた長い爪を立てて畳や床に爪痕を残す。そして、この少女は「禿」と呼ばれてこき使われていた。だから妖怪「すじかぶろ(筋禿)」だ。
都内でも有数の花街として、かつて日暮れともなれば芸者たちが行き交っていた神楽坂。しかし、江戸風情の残る古い街も今は昔。令和の神楽坂は、フランスと縁深い土地となっている。「日仏会館」や「アテネ・フランセ」などの施設やフランス人学校があり、さらに近年は再開発によってマンションが立ち並ぶようになったことで、東京で仕事をするフランス人がこぞって物件を購入。フランス人が数多く暮らす街へと変貌しつつあるのだ。
そうした人たちを相手にするフランス料理店は昔からあった。とはいえ、今のようにフランス人が多くなると数が足りない。そこで、居酒屋や中華料理屋、韓国料理屋など地元の飲食店が次々と買収され、フランス料理店へと看板をかけ替えているが、その邪魔をしているのが妖怪「すじかぶろ」だという。
僧侶に舞い込んだ不思議な依頼
とある密教僧が知り合いの女性から相談を受けた。曰く、友人が経営する韓国料理店をフランス人が買いたがっている。店主も乗り気で、売ることになったのだが、困ったことが起きたらしい。
「幽霊が出るというんですね」
なんでも、店主とフランス人との話が進み、譲渡がまとまりそうなタイミングで、急に常連客が妙なことを言い始めたのだとか。
「常連さんが『この店も騒がしくなったね』と言ってきたそうです。でも、昔ながらの八百屋さんがカフェになったり、最近の神楽坂は一層にぎやかになってきたから、そのことだろうと思ったら、違うと。その常連客は、テーブルの間を子どもが走り回っていたと言うらしくて」
しかし、配膳のアルバイトに聞いても、その時に子連れ客は来ていなかったという。最初は何かの勘違いだろうと気にしなかった店主だが、事態はどんどん深刻化。「トイレに入っているとドアの向こうで誰かがうろうろする不気味な気配がした」「食事中にテーブルの下から小さな子どもが手を出した」など、10年来の客が次々と訴えるようになったのだ。やがて、最初は笑っていた料理人まで「洗い物をしていたら何かに手をつかまれ、驚いて皿を割った」と言い始める始末。シャレにならない状況に。
「そんな話が次のオーナーの耳にも入って、『どうなっているんだ』と怒りはじめたらしいんです」
しかし、そこでふと店主は思った。もしかしたら、譲渡費用を下げるために何かを仕掛けられたんじゃないか。
「それで一度、お店を見てもらえないかという相談なんです」
危機一髪の恐怖! 何者かに腕を捕まれ……!
密教でお祓いがよく行われるのは事実だが、本当にこれが幽霊の仕業かどうか、わからない。ノイローゼの従業員がいる、水道管が壊れかけていた、近所で深夜工事をやっていたなど、調べてみれば全然違う原因だったというケースも多いのだ。
そこで、密教僧はお祓いするしないの前に現地を下見に行くことにした。神楽坂の神社の裏手にある一軒家を改造した韓国料理店で、開業して20年以上になるのだそうだ。古民家風のしゃれた外観に、店内は白を基調としたキレイな作りで、とても幽霊が出るような気配はない。
「これなら大丈夫だろう、何か別の理由があるよ」などと話しながら椅子に座り、チヂミとユッケジャンクッパとカルビと……と、オーダーしながら話をしていたら…… 後ろから何者かが突然、密教僧の両二の腕をつかんだ。それはすごい力で、腕を上げることができないばかりか、身動きも取れない。パッと視線を腕に落とすと、長い爪が腕に食い込んでいる。すると、向かい側に座っていた女性が異変に気づいた。
「どうしたの?」
密教僧は、何かに腕をつかまれているんだと答えた。
「そのまま、お祓いして!」
いやいやいや。ダメだよダメだよ、身動きも取れないから無理だ…… と返していたところ、いつの間にか解放されていた。結局、これは手に負えないと店を出たそうである。後で腕を見たら、深いひっかき傷が3本づつ、両腕についていたそうだ。
残された謎…… なぜ「すじかぶろ」が神楽坂に!
後日、密教僧がこの出来事を妖怪を研究している知人に話したら、
「それは『すじかぶろ』じゃないですか? 爪が長い、子どもの妖怪ですよ。奈良の遊郭によく出ていたらしい」
と即答。かつての遊郭、子どもの姿、爪が長く、ひっかく……と見事に合致する。妖怪はいるのだ。少なくとも神楽坂にはいる。「すじかぶろ」がいる。
ではその後、問題の韓国料理店はどうなったか? 後日談もすごかった。
心霊現象が止まらぬまま、店はフランス人に譲渡された。すると、次のオーナーは「日本人のお祓いはあてにならない」と考え、インド人の祈祷師を西葛西(東京都江戸川区)から呼びつけだ。西葛西にはインド人街があって、インド人のお坊さんもたくさんいる。そのなかに、お祓いができるお坊さんもいるのだ。日本の密教僧が唱える呪法も、元をたどればインドの経典でサンスクリット語。だから、コピーよりもオリジナルの方がよく効くらしい。
フランス人がオーナーになった韓国料理屋に巣食う日本の妖怪をインド人が除霊する――という、実にインターナショナルなサイキック事件。とりあえず、インド人の除霊によって怪異は収まったそうだ。
ちなみに、神楽坂界隈で「すじかぶろ」らしき妖怪による怪異は増加傾向にあるそうで、理由はわからない。奈良県に残る伝承によると、「すじかぶろ」は池に棲むとされるが、神楽坂に池はない。どこに棲み、何が目的かわからないまま、神楽坂のレストランでは今夜も誰かが爪を立てられている。
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