戦火を知らぬ爆撃機はなぜ呪われた?「幽霊爆撃機RF398」40年の怪異録―BBCも戦慄した“録音された謎の声”、そして“守護霊”の温かい奇跡

戦火を知らぬ爆撃機はなぜ呪われた?「幽霊爆撃機RF398」40年の怪異録―BBCも戦慄した“録音された謎の声”、そして“守護霊”の温かい奇跡の画像1
画像出典:© M J Richardson / Geograph.org.ukCC BY-SA 2.0

 英国空軍(RAF)コスフォード博物館に静かに佇むアブロ・リンカーンRF398。一見、戦後航空史を物語る磨き上げられた遺物に過ぎないこの爆撃機が、実は40年以上にわたり「世界で最も幽霊が出る航空機」として、数々の不可解な現象や目撃談の舞台となってきた。幽霊のような人影、謎の物音、説明のつかない出来事の噂は絶えず、好奇心旺盛な訪問者から超常現象研究家、そして懐疑論者までをも惹きつけてやまない。一体何が、このRF398をこれほどまでの幽霊話の中心に据えているのだろうか。

戦火を知らぬ爆撃機に囁かれる噂

 アブロ・リンカーンは、第二次世界大戦末期に名機ランカスター爆撃機の後継として開発された。RF398が初飛行したのは1945年9月。すでに大戦は終結しており、実戦を経験することはなかったが、1963年までRAFで運用された後、1968年にRAFコスフォードに運ばれ、博物館の展示物となった。

 戦いの傷跡こそないものの、RF398には説明のつかない逸話が数多く残されている。機内で死者が出たという記録もない。にもかかわらず、その超常現象の評判は、幽霊が出るとされるどんな古戦場にも引けを取らないほどだ。

 この爆撃機にまつわる幽霊話が本格的に語られ始めたのは1979年のこと。夜遅くに修復作業をしていた技術者たちが、人影が近づいてきて消えるのを目撃したと主張。翌朝には工具や部品が移動していたという。その1年後には、格納庫の施錠をしていた職員が機体近くに人影を認め、照明をつけ直すと誰もいなかった。さらに数日後、暗闇で作業していた整備士が見えない力によってスパナを手に押し付けられるという奇妙な体験をしている。

 こうした出来事は瞬く間に博物館スタッフの間で広まり、ドアが勝手に閉まる、奇妙な物音がする、コックピットや後部銃座で幽霊のような人影が目撃されるといった報告が相次いだ。最もよく目撃されるのは、飛行服を着た金髪の若い男性で、近づくと姿を消してしまうという。

戦火を知らぬ爆撃機はなぜ呪われた?「幽霊爆撃機RF398」40年の怪異録―BBCも戦慄した“録音された謎の声”、そして“守護霊”の温かい奇跡の画像2
イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI)

噂の主はヒラー操縦士?深まる謎と調査

 この幽霊の正体として有力視されているのが、かつてRF398をこよなく愛したヒラー上級操縦士だ。彼は1963年のRF398の最終飛行を担当し、「自分の愛機に取り憑いてやる」と語ったと伝えられている。皮肉なことに、彼はその直後、コスフォード近郊で別の航空機事故により命を落としてしまう。この悲劇が、「彼が約束を果たしたのではないか」という憶測を呼んだ。機体を点検するかのように、あるいはコックピットに静かに座っている孤独な人影の目撃談は、ヒラー氏とRF398の間に残る強い絆の表れなのかもしれない。

 RF398の奇妙な評判はメディアの注目も集めた。1991年にはBBCが調査に乗り出し、ジャーナリストと超常現象研究家が機内で録音機器を設置して2晩を過ごした。その結果、温度変化や建物の構造だけでは説明が難しい機械音が記録されたという。元乗組員がこの録音を聞いたところ、いくつかの音は飛行前点検の手順で行われる作業音だと特定され、謎は一層深まった。

 他の超常現象調査チームもこの謎に挑んでいる。チェスターフィールド超常現象研究グループは、機内にテープレコーダーを設置したが、わずか40分後にはテープが不可解にほどけ、改ざんされていた。その後の調査でも、特にコックピット周辺で奇妙な物音が確認されている。

 テレビ番組でも取り上げられ、1990年代にITVで放送された「ストレンジ・バット・トゥルー」では、RF398が不可解な現象の一つとして特集され、全国的な知名度を得た。博物館スタッフのインタビューや目撃談の再現VTRは、この爆撃機の「幽霊が出る」というイメージを人々の心に強く刻み込んだ。1984年の別のテレビ番組撮影中には、カメラマンが軍人の幽霊らしき輪郭を目撃し、クルーを動揺させたというエピソードもある。

戦火を知らぬ爆撃機はなぜ呪われた?「幽霊爆撃機RF398」40年の怪異録―BBCも戦慄した“録音された謎の声”、そして“守護霊”の温かい奇跡の画像3
イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI)

作り話と真実の境界線:それでも続く不可解な現象

 しかし、この幽霊話の全てが純粋な謎に包まれているわけではない。1980年代後半、数人のRAFコスフォードの技術者が、初期の幽霊話の一部は自分たちがでっち上げたものだと告白したのだ。彼らの目的は、RF398をマンチェスターの博物館に移送する計画に抗議するためだったという。不気味な噂を広めることで世間の注目を集め、移送を断念させようとしたのだ。そして、その戦略はある程度成功したように見える。噂が広まるにつれ移送計画は静かに立ち消えになったからだ。

 だが、この告白で全てが解決したわけではない。最も説得力のある目撃談や不可解な現象の多くは、この「でっち上げ」が暴露された後に起きているのだ。超常現象研究家や博物館スタッフは、最初の話は作り話だったかもしれないが、それがかえって本物の現象に光を当てるきっかけになったのではないかと考えている。偶然か必然か、RF398の「幽霊が出る航空機」としての評判は、その後も高まり続けた。

守護霊か、空想か?RF398にまつわる温かい話

 RF398にまつわる話は、必ずしも恐ろしいものばかりではない。ある電気技師は、機体作業中に4.5メートル落下した際、見えない力に助けられたと語っている。重傷を覚悟したものの、まるで誰かに支えられるように穏やかに着地したというのだ。彼はこれを、RF398を守る霊の仕業だと信じている。

 また、必要な時にちょうど工具が現れたり、修理中に誰かが手助けしてくれているような温かい気配を感じるという作業員もいる。失くしたものが、まるで導かれるように適切な場所に戻ってくることもあるという。これらの話は単に憑りつくだけでなく、この航空機を大切にする人々を積極的に助けようとする、慈愛に満ちた幽霊の姿を思い起こさせる。

 RF398の伝説は、今やイギリスの主流文化の一部となっている。テレビドキュメンタリーやニュース、無数のオンライン記事で取り上げられ、1991年に訪問者が撮影した後部銃座の幽霊写真は、今も信奉者と懐疑論者の間で議論を呼んでいる。

戦火を知らぬ爆撃機はなぜ呪われた?「幽霊爆撃機RF398」40年の怪異録―BBCも戦慄した“録音された謎の声”、そして“守護霊”の温かい奇跡の画像4
後部銃座に現れた幽霊を捉えたとされる『シュロップシャー・スター』紙の写真 画像は「Paranormal Globe」より

 今日もなお、この爆撃機は超常現象に興味を持つ人々を引きつけてやまない。それは光のいたずらか、人間の想像力の産物か、それとも本物の超常現象なのか。RF398は、英国で最も魅力的な幽霊話の一つとして、その謎めいた翼を広げ続けている。この航空機は二度と大空を舞うことはないかもしれないが、その物語は、説明のつかないものの世界で今もなお高く、そしてミステリアスに飛び続けているのだ。

参考:Paranormal Globe、ほか

関連キーワード:, , ,
TOCANA編集部

TOCANA/トカナ|UFO、UMA、心霊、予言など好奇心を刺激するオカルトニュースメディア
Twitter: @DailyTocana
Instagram: tocanagram
Facebook: tocana.web
YouTube: TOCANAチャンネル

※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。

人気連載

“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.10.02 20:00心霊

戦火を知らぬ爆撃機はなぜ呪われた?「幽霊爆撃機RF398」40年の怪異録―BBCも戦慄した“録音された謎の声”、そして“守護霊”の温かい奇跡のページです。などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで