英メイドカフェが「非モテ独身男性向けのフーターズ」だと揶揄される! 根強いオタクへの偏見に経営者が怒り

 メイドカフェは非モテ系のフーターズだった!? イギリスの地方議員の発言をきっかけにしたメイドカフェ批判にオタク業界が遺憾の意を表明している。この議員はメイドカフェの何たるかをわかっていないというのだ。

メイドカフェは非モテ系の巣窟なのか

 日本では普及しきった感のあるメイドカフェ(メイド喫茶)だが、海外ではまだまだ目新しく、一部からは奇異にも映る存在だ。

 先日、イギリス・マンチェスターにオープンしたメイドカフェ「Animaid Cafe(アニメイドカフェ)」についての地元地方議員の発言が物議を醸しているようだ。

 地方議会議員のジョアン・ハーディング氏は先日ツイッターに、マンチェスターのアフレックス・パレスにオープンしたメイドカフェについての私見を書き込んだ。

「これ(メイドカフェ)はマンチェスターで何ていう新しい地獄ですか?」(ジョアン・ハーディング氏)

 メイドカフェを毛嫌いしているかのようなハーディング議員のツイートに多くのユーザーが反応し、賛同する何十人もの人々がカフェに「うんざり」していると書き込み、あるユーザーはメイドカフェは「インセルのフーターズ」のようなものだと評する書き込みをしている。

英メイドカフェが「非モテ独身男性向けのフーターズ」だと揶揄される! 根強いオタクへの偏見に経営者が怒りの画像1
画像は「Animaid Cafe (Instagram)」より

 インセル? フーターズ? と、一度聞いただけでは何のことやら意味がわからなくても無理はないともいえるので、少し解説してみよう。

 インセル(incel)とは「非自発的禁欲主義者(involuntary celibate)」の略語で、自ら望んではいないものの結果的に禁欲的な生活を送っている男性を指す言葉である。宗教的信念などに根差して禁欲生活を送る者もいるのだが、インセルはそうした信念などはないのに生活が禁欲的になってしまっている者のことで、これにしっくりくる日本語の単語が“非モテ”だろう。

 そしてフーターズ(Hooters)とは、日本の銀座にもあるアメリカンレストラン&スポーツバーのことで、チアリーダーをイメージしたスタッフ(フーターズガール)のホスピタリティあふれるおもてなしで人気のスポットである。ホットパンツにタンクトップのユニフォームに身を包んだフーターズガールを目当てに来店する独身男性をメインの客層に見込んでいることは明らかだ。

 つまりこのツイッターユーザーは、メイドカフェは非モテ系が行くバーだと揶揄しているのである。メイドカフェ愛好家にしてみれば酷い言われようだろう。

「来たい人にとって安全な場所になりたい」

 ツイッターでのこうした論調を受けて、「Animaid Cafe」のマネージャーの1人であるヴィック・リトリー氏は、ハーディング議員の反応は侮辱的であり、メイドカフェが何であるかを理解していないと地元メディア「Manchester Evening News」に話している。

「思いがけずに軽蔑された気分になりました。ほとんどのスタッフは若い女性です。(ツイッターへの)投稿は私たちが実際に何であるかを理解することなく行われました」(ヴィック・リトリー氏)

 同店は日本の人気現象をイギリス風にアレンジしたもので、メイドの衣装を着たスタッフが使用人のように振る舞って、趣のある部屋の中でお客をまるで主人であるかのように扱うという“プレイ”を提供している。

「投稿は非常に攻撃的で、私たちの目的とはまったく異なります。…(中略)…私たちは、来たい人にとって安全な場所になりたいだけなのです」(ヴィック・リトリー氏)

英メイドカフェが「非モテ独身男性向けのフーターズ」だと揶揄される! 根強いオタクへの偏見に経営者が怒りの画像2
画像は「Animaid Cafe (Instagram)」より

 そしてリトリー氏は、メイドカフェはほかの人気のカフェである猫カフェやゲームカフェなどと何ら変わりはないことを力説する。

「そもそもからかわれることの多いコミュニティなので、投稿を見るのは悲しかったです。取り残されたと感じている人々がここに来れば、とてもポジティブな友だちを作ることができます」(ヴィック・リトリー氏)

 このリトリー氏の発言を受けてハーディング議員は後に彼女の立場を明らかにしている。

「私はこのカフェを閉鎖するよう働きかけているわけではありません。私は小さな独立したビジネスを支持しており、この施設を閉鎖したいと提案したことは一度もありません。私はまた、若者が出会い、楽しむことを妨げているわけではありません」(ハーディング議員)

 一転して肯定的な発言を行っているハーディング議員だが、どうやらメイドカフェについての懸念はマンチェスターの女性と少女の安全に関わるものであったようだ。

 誤解が晴れたとまではまだ言えそうにもないが、ともあれ今後、イギリスでメイドカフェがどのような盛り上がりを見せるのか気になるところだ。

参考:「Daily Star」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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