パパ活女子に聞いたコロナ禍の地獄… 身分制度と極貧家庭、援デリ業者に“壊された”女性

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画像は「Getty Images」より

 新型コロナウイルスの流行により、感染の温床とされた夜の街から灯りが消えた。居酒屋などの飲食店が大きな影響を受けたのみならず、性風俗で働く女性たちも収入源を失った。そして立て続けにロシアのウクライナ侵攻による物価高騰もあり、彼女たちの生活は再び打撃を受けている。そうした状況のなか、わけあって知り合った女性から聞いたパパ活女性のリアルを紹介しよう。

 今年の2月、関西某所でYさんという女性と出会った。普段から出会い系アプリでパパ活をしているという彼女は、今時のギャルで驚くほどの美人だった。彼女との会話も楽しく、何度も会うようになっていったのだが、目の奥に暗いものがあるのが気になるようになった。

 彼女はとある専門学校に通っていたのだが、そこではパパ活やウリをしている人は珍しくないという。理由はやはりコロナ禍。多くの学生がバイト先を解雇されたり、シフトを大幅に減らされ収入源が激減したそうだ。

 給付金も瞬く間に使い果たし、わずかにあった貯金さえ使い果たしたという。奨学金も借りており、実家には迷惑はかけられない……そう考えたYさんや周りの友人はパパ活を始めた。

 しかし、コロナ禍で女性たちの供給はあまりに過剰になり、結果として相場は大下落。コロナ禍前の半分以下にまで落ちたという。そうなると、周りと同じことをしていても稼げないため、サービスを良くするしかない。結果、梅毒といったタチの悪い性病が蔓延するようになった。

 そうした中、Yさんはツイッターを通じてパパ活を始めたという。そこで援デリ業者からスカウトされ、働くようになったそうだが、その実態があまりにひどかったという。

 性病検査や堕胎費用は自費が当たり前。性病に感染したり妊娠したりしても、業者は一切サポートしてくれない。リスクを背負って働いても、収入の半分は業者が持っていく。こうした悲惨な状況にYさんは嫌気がさし、早々に抜け出すことに成功したが、もし彼女が業者に借金をしていたら話は違ったかもしれない。

 いわく、援デリを続けざるを得ない女性は性病や妊娠を繰り返し、その治療費を業者から借金。その借金を返すためにまた体を売り、性病や妊娠……という悪循環に陥り、最終的に自分が置かれた状況のまずさに何も感じないほど“壊れて”しまっていたという。

 だがどうしても腑に落ちないことがあった。どうしてそれほどまでの状況になってもYさんは実家に助けを求めないのだろうか? 単刀直入に聞くと、非常に重い家庭の事情をYさんは話してくれた。

 Yさんの実家はある地方の山奥にある。実家は極貧で、新聞どころかテレビさえない状態だそうだ。4人兄妹のうち、長女は難病持ちで働くことができない。次女は精神を病んでおり、自身の子供も育児を放棄。長女と彼女の交際男性が子供の面倒を見ているという。そのためYさんも定期的に実家に帰り、家の手伝いをしないといけないらしい。

 とはいえ、それほどの状況ならば行政の支援を受けられるのではないかと私は思った。不躾かもしれないが、素直にそのことをYさんに話すと、彼女から思いがけない答えが返ってきた。

「私の家族は昔の一番下の身分だったんです……。」

 あまりのショックに話をうまく飲み込めなかったのだが、彼女らはそうした過去の身分制度の影響をいまでも受けていて、その地域で蔑視されているというのだ。嘘のようだが本当の話である。

 Yさんだけでなく、周りの友人らも極限の貧困状態であることを警察や市役所に相談したところで、救助の手が差し伸べられたことは一度もなかったという。

 来年、Yさんは専門学校を卒業して就職する予定だという。収入は多くないだろうし、奨学金や実家への仕送り、さらには格安の学生寮からの引っ越しも簡単ではないだろう。

 私事になるが、かつて私はホームレス同然になったことがあり、さまざまな人に助けてもらったおかげで立ち直ることができた。そのときに、いろいろな人との繋がりができ、なかには人を助けることを使命としている人が多いことを知った。そうした自分がYさんと知り合ったのも何かの縁だと思い、今後も彼女の力になることを約束すると、彼女の目から涙が零れた。

 彼女とは定期的に連絡を取っているのだが、最近こんな会話があった。

「生活に困ってない? 何か欲しいものはある?」

「では一つだけ欲しいものがあります。いいんですか?」

尋ねるとYさんはこう答えた。

「いま使っているリップクリームが切れそうなんです。買っていただけるのですか?」

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文=栗林安吾

30代男性。性風俗業界、障碍者雇用施設、精神病棟など社会的辺境とみなされる場所で取材を行う。昭和アニメや特撮が大好物。

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