元妻への病的なまでの愛情で苦しむ中年男性
精神病院入院記 「元妻への病的なまでの愛情に苦しむ中年男性」の思い出

■独房のような個室
皆さんは精神病院にどんなイメージを持っているだろうか? 私の経験では、「暗い」「恐い」「近寄りがたい」といった負のイメージを聞くことが多かった。確かにそれは間違いではない。しかし、そこには一言でとても言い尽くすことのできない、さまざまな事情を抱えた人々の複雑なドラマがある。
私は数年前、京都のとある精神病院の開放病棟へ入院することになった。当時、大学生だった私は、アルバイトを解雇され、生活もうまくいかず、人生のどん底にあった。当時を知る母によると、徐々に奇行が増えていき、浪費も激しかったという。自暴自棄になりおかしくなってしまっていたのだ。周囲ほどではないにしろ、自分でも異常な精神状態になっていることは薄々気づいていた。家族のすすめで入院することになり、最初は反対したが、内心ホッとしている自分もいた。
入院してしばらくは個室に入った。刑務所の独房のような部屋で、トイレも室内の片隅に置かれていた。ドアには患者を監視するためののぞき窓があり、プライバシーは一切ない。奇妙だったのは、室内側のドアに何もついていなかったことだ。ドアノブどころか突起物が全くなかったのだ。後に知ったが、患者がドアノブで首を吊らないためにそうしていたという。また、患者の異変を察知し、医師や看護士がすぐに来られるよう、防音性もなかった。
■元妻への愛情で病んでしまった男性
そのため隣の個室の音も聞こえてくる。入院して間もない頃、隣から「もう人生終わりやぁ……」と、すすり泣く声が聞こえてきた。中年男性の声だ。いったい彼に何があったのだろうか? 個室には本を持ち込めたが、彼のすすり泣く声が気になってしまい、とてもではないが読書に集中できなかった。人生に絶望する彼の悲嘆を聞きながら、私は自分が本当に病んでいるのだとやっと自覚できたように思う。

個室を出てからは病棟内を自由に歩き回れるようになり、2人部屋に入ることになった。同室者は薬剤師の中年男性Aさんだ。元妻が大病を患い『あなたのことは好きだが、これ以上迷惑をかけられない』と言われ、泣く泣く離婚したのだという。あえて聞かなかったが、それこそが彼が病んでしまった原因だったのだろう。
ある日、彼がいない間にベッドの横に置かれたノートを盗み見てしまったことがある。そこには元妻への愛の言葉がびっしりと書き込まれていた。また、元妻を助けられなかった自分の無力さを嘆く言葉も無数に書き込まれていた。彼の文字通り病的なまでの愛情に私は心を震わされるとともに戦慄したのを今でもよく覚えている。
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