日本人はUFOをどのように受け止めたのか? 昭和25年の「空とぶ円盤」事情

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画像は「Getty Images」より

――「超常現象」分野に深い造詣を持つオカルト研究家・羽仁礼が歴史的UFO事件を深堀り。アーノルド事件からCBA事件までを振り返る。

第1回:UFO史を紐解くー「ケネス・アーノルド事件」(1) 
第2回:UFO史を紐解くー「ケネス・アーノルド事件」(2)
第3回:UFO史を紐解くーケネス・アーノルド事件以前の目撃例(1)
第4回:UFO史を紐解くーケネス・アーノルド事件以前の目撃例(2)
第5回:日本UFO研究事始めー「宇宙機」とその時代(1)
第6回:日本UFO研究事始めー「宇宙機」とその時代(2)
第7回:戦前に設計された円盤形航空機「ディスコプター」とは?
第8回:UFO=宇宙人の乗り物説は日本発祥だった!?
第9回:UFO研究の先駆者ドナルド・キーホー概説
第10回:1897年「オーロラ事件」は世界初のUFO墜落事件なのか?
第11回:謎に包まれた「アズテック事件」を解説(1)
第12回:謎に包まれた「アズテック事件」を解説(2)

 1950年(昭和25年)、日本では「空とぶ円盤」という言葉がほぼ市民権を得て、新聞や雑誌の記事の中にも、この文字が頻繁に見られるようになった。さらに『科学の友』1月号「空とぶ円盤の正体」、1月14日付『東京日日新聞』「『空とぶ円盤』を科学する」、『科学朝日』6月号「“空とぶ円盤”の正体」、『リーダーズ・ダイジェスト』7月号「空とぶ円盤は実在する」、そして本連載第6回でも触れた『ロケット』8月号「世紀の驚異円盤ロケットの謎をさぐる」など、その正体を解明しようと試みる記事もいくつも登場した。

 こうした記事を読むと、その正体としてはやはり秘密兵器説が優勢であり、幻覚説や悪戯説が続く。つまりは、1947年(昭和22年)、ギャラップ社がアメリカで実施した世論調査の結果と大差ないのである。

 ただこの年の1月3日付『読売新聞』朝刊は、アメリカの作家フレッチャー・プラットの発言として、他の惑星から飛来したUFO(※1)が墜落し、身長1メートルもないような乗員が見つかったと報じている。この報道を受けた記事が、この年の『ロケット』誌4月号に掲載された。中正夫(1900~1963)の、「空飛ぶ円盤の謎来るか遊星人」である。

 ちなみに「遊星」という言葉は「惑星」と同じ意味であり、「惑星」に統一されるまで、日本の天文学会では二種類の表記が用いられていたのだ。

 記事を書いた中正夫は、長年『毎日新聞』航空記者を務め、第二次世界大戦以前から航空関係の多くの著書を著してきた人物である。戦後は『神変夢幻城』や『髑髏の仮面』(いずれも1948年)などの少年向け冒険小説も手がけ、1951年(昭和23年)刊行の『航空の脅威』(偕成社)でも、空飛ぶ円盤の話題にも触れている。1957年(昭和32年)1月には、乞われて「日本空飛ぶ円盤研究会」顧問にも就任している。

『ロケット』4月号の記事では、フレッチャー・プラットの発言を紹介し、ゴーマン中尉事件やマンテル大尉事件にも触れつつ地球製の兵器という説も併記しつつ、宇宙船説にも含みを残している。

 続く『科学朝日』6月号の「“空とぶ円盤”の正体」は、浅田常三郎大阪大学教授や山本一清田上天文台長、村山定男科学博物館員など、いわゆる識者からの意見を集めた内容で、幻覚や星の誤認、新型の航空機やロケット弾などの諸説と並んで火星人の乗り物ではないかとの見解も登場している。

『リーダーズ・ダイジェスト』7月号の「“空とぶ円盤”は実在する」は、主としてイースタン航空のチャイルズ機長とウィッテッド副機長が目撃した、いわゆるチャイルズ・ウィッテッド事件を主に解説しつつ、結局はアメリカの新兵器と結論している。他方、「“空とぶ円盤”は、たいてい空中で分解して一定の時間がたつと消滅してしまう物質で作られている」とも述べているが、このような航空機素材が実用化されたという話はない。

『AOBA』8月号「空とぶ圓盤の正体」も火星人の乗り物という説と墜落事件に触れている。

 では、1950年にアメリカで相次いで出版されたドナルド・キーホーの『空とぶ円盤は実在する』や、フランク・スカリーの『UFOの内幕』は日本でどのように受け止められたのだろうか。

 ドナルド・キーホーが宇宙船説を唱えたことは、この年の4月29日付『東京日日新聞』の記事「新兵器か空飛ぶ円盤」が触れている。

 この記事では前年12月に「プロジェクト・ソーサー」が閉鎖されたとも述べているが、正確に言うとこのUFO調査機関の名称は「プロジェクト・グラッジ」であり、実際にはその後も規模を縮小して継続している。

 アメリカ空軍はまず1948年1月、ライトフィールド空軍基地(後のライトパターソン空軍基地)にUFO研究機関「プロジェクト・サイン」を設立、1949年2月に「プロジェクト・サイン」に名称変更されたのだ。

 しかしこうした空軍の研究機関の名称は長く秘密にされていたため、外部の研究者は暫定的に「プロジェクト・ソーサー」という呼び名を用いていたのだ。

 この記事は、他の諸説と並んで、キーホーが『トゥルー』誌に、UFOは他の天体から来たという話を掲載したことに触れ、これを「新説」として紹介している。

 フランク・スカリーの『UFOの内幕』については、『明窓』12月号に、この著作がアメリカでベストセラーになっていると述べる記事が掲載された。ただし内容は荒唐無稽であると批判的である。

 なお、1947年に「空とぶ圓盤」という記事を『少年』に執筆した物理学者中谷宇吉郎は、10月25日付『読売新聞』夕刊に「国連と科学」という随筆を載せ、その中で「空とぶ円盤の中に小人がいた」という話に触れている。時期的にはアメリカで『UFOの内幕』が出版された直後になるが、これがスカリーの著書を意識したものか、それともフレッチャーの発言を受けたものかは明らかでない。

(※1) UFO(Unidentified Flying Object:未確認飛行物体)は、説明のつかない航空現象をすべて含むが、現在は「宇宙人の乗り物」という意味で用いられることが多い。そのため、現在アメリカ軍では「宇宙人の乗り物」という意味合いが強くなったUFOに替えて、説明のつかない航空現象に対し、「UAP(Unidentified Aerial Phenomena:未確認航空現象)」という呼称を採用している。

文=羽仁礼

一般社団法人潜在科学研究所主任研究員、ASIOS創設会員、 TOCANA上席研究員、ノンフィクション作家、占星術研究家、 中東研究家、元外交官。著書に『図解 UFO (F‐Files No.14)』(新紀元社、桜井 慎太郎名義)、『世界のオカルト遺産 調べてきました』(彩図社、松岡信宏名義)ほか多数。
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