「イルカ部隊」アメリカやロシアで軍事利用される実態とは

Claudia BeerによるPixabayからの画像

 水族館などで人気の高いイルカは、チンパンジーやカラスと並び、非常に知能の高い動物としても知られている。実際のところの真偽は不明であるが、イルカのその知能の高さを語る上で、水泳中に溺れた人間をイルカが助けたといった逸話はあまりにも有名だろう。だが、そんなイルカが一部で軍事利用されているとしたらどうだろうか。

 かつて、ソ連とアメリカが冷戦状態であった頃、海中での潜水艦や機雷の探知、港湾や軍艦周辺での不審人物の発見のために、イルカを活用していたと言われている。アメリカにおいては、1950年代からイルカの軍事利用が研究されており、現在も90頭近いほどの規模を有しているという。2003年にはイラク戦争の湾岸において、海底に設置された地雷などの捜索をするチームにイルカを動員していたという。

 1960年代、アメリカ軍がイルカの活用で成果を上げていると聞きつけたソ連は 、同様にイルカの軍事的導入を検討するようになり、敵艦へ爆発物を仕掛ける、魚雷や沈没船を見つける、といった用途でイルカが活用されたという。1965年には、クリミアで本格的にイルカの軍事訓練施設が設けられ、 一時は放置されたものの2012年にウクライナが施設の再建を行 ない、2014年にはクリミアがロシアへ編入となったことからロシアのものとなった。

 2019年、ノルウェーの北極海沖でロシア製のハーネスをつけたシロイルカが 発見された。この海域はロシアの基地も存在しており、またハーネスに小型カメラが搭載されていた頃から、 ロシアによるイルカを用いたスパイ活動だったのではないかとされ たが、 実際はスパイではなく明確な戦闘要員としてイルカが訓練されてい ることがロシア海軍の回答によって認められたという。

 また2002年にはシリア西部の海軍基地において、潜水工作員の軍艦攻撃の対策としてロシアのイルカ部隊が配置され たとの一報がなされている。このイルカは、 工作員の発見と捕獲を目的としているが、 捕獲に失敗した場合は侵入者の排除(殺害) をするように訓練されていると推察され、また機雷による敵船へ攻撃を行なう訓練も受けているのではないか と考えられていた。

 このロシアにおけるイルカ部隊は、現在も続くウクライナ侵攻においても活用されていた。しかし、そんなさなかの2013年の12月、その軍用イルカたちが逃げ出したというニュースが飛び込んできたのだ。同年11月末に黒海海域を襲った暴風雨により、 クリミア半島で軍用として飼育されていたイルカをおさめた囲いが、損壊していたことが衛星画像によって確認された。これにより、軍用目的のシロイルカやバンドウイルカの多くがロシアから逃亡し たのではないかと言われている。

 ロシアとウクライナの戦争によって、黒海に在来していたイルカをはじめとする多くの生物が汚染などに よって被害を受け、イルカにいたっては数百頭から数千頭もの個体が命を失ったとも言 われている。逃亡したイルカたちは、そのような惨状をも理解した上で、逃亡を図ったのかもしれない。

【参考記事・文献】
ロシアがイルカの軍事利用を再開か。米軍はアシカも研究・訓練
ロシアの「イルカ」スパイを発見か ノルウェー沖

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【文 ナオキ・コムロ】

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文=ナオキ・コムロ(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

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