誰も書かない「犬鳴村」の裏歴史を考察 ― 稚児落とし、犬神憑き、鳥飼論文、治外法権
※当記事は2020年の記事を再編集して掲載しています。

「白のセダンは迂回してください」「この先日本国憲法適用されません」「突然プレハブ小屋の前で囲まれて車に斧を振られた」「島根から来た男女が行方不明になった」「島根ナンバーの白い車が破壊されて放置されている」……1988年の焼殺事件、2000年の死体遺棄事件、2001年の死亡事故……。九州最強の心霊スポット「犬鳴村の都市伝説」は真実を隠蔽するための陰謀なのか? 歴史の闇に埋もれた真実を宗教・オカルトの専門家・神ノ國ヲが報告!
――そもそも犬鳴村とは?
(神ノ國ヲ)2020年の公開当初、映画『犬鳴村』を批評家と観にいったのですが、特に注目したのは、映画において「犬鳴村」と、ダムに沈んだ「犬鳴谷村」が混同されて表現されていたことです。おそらく意図的にそうしているのでしょう。そもそも、都市伝説「犬鳴村」は、大衆の目を「真実」から逸らすために作られたものですからね。
――真実から逸らすため? 神ノさんは、この原稿を書くにあたり現地調査もしたそうですね。
(神ノ國ヲ) 現地調査のために部下を派遣しました。福岡出身のラガーマンで、一流私大卒・経済政策の修士号を取ったエリート、いまは税務関係で働くF調査員です。地元も近く、趣味は福岡県内の山登り。そのF調査員が犬鳴山で遭難しかけ、イノシシに襲われそうになるなど、身を案じる瞬間もありましたが、無事に生還しました。F調査員は鳥飼論文(後述)を裏付ける証言を取って来てくれましたが、別件で気になるものがありました。
以下、【F調査員の報告書(別件報告抜粋)】
……ところで別件ですが、霊峰K山にも行ってきました。行き止まりに集落があり、さらに奥へと進む一本道の先には神社があります。さらに進むと「稚児落とし」という崖に出ます。その下には、何かを供養するために地蔵が安置されていました。つい最近まで女人禁制で修験道が盛んな山でしたから「間引き」もあったんでしょうね……。子供が落ちたら犬が鳴くような音を立てて死ぬかもな……と思いました。
また付近の別の山で奇妙な集団を見かけました。新興宗教か何かだと思います。霊山への入り口に結界を立てるために神社を置くことがよくあるので、神社の裏で入山口を探していました。探し歩いて、少し離れたところに出たら、滝の近くに廃屋がありました。下に見える駐車場には、なぜか黒塗りのベンツが大量に停まっていました。明らかにヤクザです。すると、廃屋から坊さんが出て来て歯を磨き始めた。話しかけると入山口を教えてくれました。「ただし、この黄色いロープから絶対に手を離さないように」と。登り始めてすぐに気付きました。あぁ、ここは元々修行のための古道で、少なくない人が死んでいる。ヤクザが来ている理由も察してしまうというか……。

――「真実」とは一体…?
(神ノ國ヲ)実は、「犬鳴村」については、鳥飼かおる氏の『「筑豊」という「場所」から考える、都市伝説「犬鳴村」のイメージ生成について』という学術研究があります。鳥飼論文は、インターネット上の「新名所」の特徴を、実在の地域にありながら「消された」「存在しない」場所であるとします。たとえば、鳥飼は「津山三十人殺し」を描いた「八つ墓村」のイメージの延長線上に「杉沢村」「犬鳴村」「きさらぎ駅」を想定するのです。
同論文では、1970年代から80年代にかけて、当時の犬鳴峠周辺の農家が暴走族対策で「ケモノワナ仕掛中 事故責任は負いません」「ゴミを捨てて帰ると霊が家についてくる」等の看板を立てたとの証言を確認しています。その上で「犬鳴村」が治外法権であることから、柳田國男以来の民俗学における「山人」「サンカ」論を参照し、それが筑豊地方における「泥棒集落」のイメージと重ねられて報道された事実を確認しています。
――その「泥棒集落」が犬鳴村ですか?
(神ノ國ヲ)泥棒集落は、福岡県X町ですね。実は、鳥飼論文によれば、これら筑豊炭鉱地帯と福岡の市街地をつなぐのが「犬鳴峠」であり、さらにその近くに「地獄谷」と呼ばれる場所があったのです。この「地獄谷」は、別名「アリラン集落/アリラン峠」とも呼ばれ、28箇所あったのですが「地図には載っていません」。
これら地獄谷=アリラン峠は、大正時代に日本へ来た朝鮮炭鉱夫らが帰国できないまま暮らした場所です。従って「地獄谷=アリラン峠」は全国津々浦々無数に存在していたと言います。
これが現時点で明らかになっている歴史的事実です。しかし、私はこれらもまだ「真実」からは遠いのではないか、と考えています。
――犬鳴村、霊峰K山、謎の新興宗教にどんな関係が?
(神ノ國ヲ)鳥飼論文が示すように、憲法が通用しない=外国人絡みであるとして、アリラン峠=地獄谷が「犬鳴村」に重なるのは否定できません。しかし四国・九州での「犬神憑き」の歴史、さらに彼らの祖先の一部が修験道者などであったことを考えると霊峰K山の「稚児落とし」や、この地域の謎の新興宗教とヤクザの報告例が少ないのが気になっています。すなわち「犬鳴村の都市伝説」は、福岡や筑豊において古来より存在した犬神憑き系の秘密宗教を隠蔽するためのブラフの可能性があると私は考えているのです。ある特別な能力や身体的特徴のゆえに間引かれた子供たちが密かに生き伸び、修験道者になる。その集落が九州のどこかにあった可能性は否定できません。彼らの末裔は、いまや社会を裏で統べる隠然たる力を持っているかも知れないのです。
参考:「「筑豊」という「場所」から考える、都市伝説「犬鳴村」のイメージ生成について(鳥飼かおる)」
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2024.10.02 20:00心霊誰も書かない「犬鳴村」の裏歴史を考察 ― 稚児落とし、犬神憑き、鳥飼論文、治外法権のページです。犬鳴村、アリラン峠、筑豊炭鉱. 泥棒部落、犬神などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで