鬼火(ウィル・オ・ザ・ウィスプ)の正体、ついに解明か?― “マイクロ雷”が引き起こす湿地に浮かぶ青い光の謎

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鬼火 (和漢三才図会) Terajima Ryōan (寺島良安) – ISBN 4-1220-1958-3., パブリック・ドメイン, リンクによる

 沼地や墓場に現れ、ゆらゆらと漂う青白い光――。古くから世界中で目撃され、エルフや妖精、あるいは死者のとして語り継がれてきた「鬼火=ウィル・オ・ザ・ウィスプ」。何千年もの間、人々を恐怖させ、また魅了してきたこの超常現象の謎が、ついに科学の力によって解き明かされようとしている。

 最新の研究が捉えたのは、火花が鬼火を発生させる、まさにその決定的瞬間であった。

謎の半分は解明されていた―“沼地ガス”の正体

 鬼火の正体については、400年も前から、その半分は解明されていた。神学者ルートヴィヒ・ラヴァーターは、鬼火が、有機物が酸素のない状態で腐敗し、メタンガス(沼地ガス)を発生させる場所で多く目撃されることに気づいていた。そして18世紀後半には、科学者たちが、この光がメタンの酸化によって生じることを証明した。

 現代では、夜間の冷えた空気によって、水中のメタンが気体として放出されやすくなるという温度効果さえも解明されている。

 しかし、この「沼地ガス説」には、一つの大きな謎が残されていた。火が燃えるためには、必ず「発火源」が必要である。夜の冷たい湿地で、一体何がメタンガスに火をつけているのか。この謎が、鬼火を超常現象の領域に留めさせてきたのだ。

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決定的瞬間を捉えたハイスピードカメラ

 この長年の謎に終止符を打つかもしれない、画期的な研究が発表された。その鍵は、「マイクロ雷」と呼ばれる、ごく微小な放電現象にあった。

 研究チームは、ハイスピードカメラを用いて、メタンの気泡が鬼火を生み出す瞬間を詳細に撮影。その結果、驚くべきメカニズムが明らかになった。

 水中で発生したメタンの気泡は、水中を移動したり、分裂・結合したりする過程で、静電気のようにプラスまたはマイナスの電荷を帯びる。そして、気泡が空気中に放出された後、プラスに帯電した気泡と、マイナスに帯電した気泡が隣接した瞬間、その間に火花、すなわち「マイクロ雷」が飛ぶのだ。

 この微小な放電が、燃焼を伴わない「非熱酸化」という化学反応を引き起こし、メタンと酸素が反応するエネルギーを、熱ではなく、主に青紫色の光として放出する。これが鬼火の正体であると研究チームは結論付けた。

 この発見は、鬼火の目撃者が報告する「熱を感じなかった」という長年の謎にも、完璧な説明を与える。

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妖精は、地球温暖化から我々を守っていた?

 これまで、鬼火の発火源として最も有力視されてきたのは、沼地ガスに含まれる微量の「ホスフィン」という物質であった。ホスフィンは、酸素に触れると自然発火する性質を持つため、これがメタンガスに引火するのではないか、と考えられてきた。今回の「マイクロ雷」説は、それに代わる、新たな、そしてより強力な説明となる。

 そして、この発見は、思わぬ形で地球環境問題にも光を当てるかもしれない。

 メタンは、二酸化炭素の30倍以上もの強力な温室効果ガスである。鬼火がメタンを酸化させるということは、結果的に、より温室効果の低い二酸化炭素に変換していることを意味する。

 もしかしたら、我々が「妖精のいたずら」や「死者の魂」として恐れてきた鬼火の光は、実は、地球の熱バランスを静かに守ってくれていた、自然界の精妙なメカニズムだったのかもしれない。

 これでまた一つ、世界の謎が科学に奪われてしまったようだ。しかし、心配することはない。我々の足元には、まだ解明されていない謎が星の数ほど転がっているのだから。

参考:IFLScience、ほか

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