イルカに英語を教えれば宇宙人とも話せる!? NASAが資金を出した1960年代「イルカ言語実験」の数奇な顛末

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 もし宇宙のどこかに知的生命体がいたとして、人類は彼らと言葉を交わせるのだろうか。

 この壮大な問いに、地球上の「もう一つの知性」から迫ろうとした研究者がいた。米国の神経科学者ジョン・リリー博士である。

 1960年代、博士はNASAの資金援助を受け、カリブ海の島でイルカに英語を教えるという前代未聞の実験に乗り出した。科学史の片隅に埋もれたこの挑戦は、思いもよらない結末を迎えることになる。

地球外知性への「予行演習」としてのイルカ研究

 リリー博士は長年、イルカのように大きな脳を持つ海洋哺乳類を研究してきた人物だ。彼が抱いていたのは、イルカが噴気孔から人間に似た音を出せるようになれば、人とイルカの間で意思疎通が成り立つのではないかという構想だった。

 この研究にNASAが資金を出した理由は明快だ。人間とはまったく異なる方法でコミュニケーションをとる知性を理解できれば、将来出会うかもしれない地球外の知的生命体を理解する手がかりになると、博士は考えていたのである。

 研究拠点となったのは、カリブ海に浮かぶセント・トーマス島の一角に設けられた研究所だ。所長を務めていたのはグレゴリー・ベイトソン氏だった。

家を水浸しにした「イルカとの同居生活」

 1963年、この島に暮らしていた20歳のマーガレット・ハウ・ロバット氏は、親族から島の端にイルカを研究する秘密の施設があると聞き、自ら車を走らせて訪ねた。

 彼女に科学の専門教育はなかったが、動物の行動やコミュニケーションのパターンを見抜く才能があった。ベイトソン所長はその資質を認め、イルカを観察して気づいたことを記録する役目を任せたという。

 研究所にいたイルカはピーター、パメラ、シシーの3頭。体が大きく群れを仕切るシシー、臆病なパメラ、そして若いオスのピーターと、性格はそれぞれ違っていたと彼女は振り返っている。

 実験の目的は、イルカが英語を理解し、話せるようになるかを確かめることだった。そのために一軒の家の1階を水で満たし、人間とイルカが24時間ともに暮らせる空間に改造したのである。まさに「一つ屋根の下」で言葉を教え込む、究極の住み込み教育だった。

 ロバット氏はとりわけピーターと深い絆を築いていった。後年、性的に成熟しつつあったピーターの欲求にも、研究生活の一部として応じていたことを彼女自身が明かしており、この点はのちに大きな議論を呼ぶことになる。

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引き離されたピーターの最期と、実験に残った影

 やがて研究資金が途絶えると、ピーターはロバット氏と引き離され、約1600km離れたフロリダの小さな研究施設へ移された。そしてわずか数週間後、ピーターは死んでしまう。

 ロバット氏によれば、リリー博士から直接電話があり、ピーターが自ら命を絶ったと伝えられたという。研究所の獣医師アンディ・ウィリアムソン氏も、最愛の相手を失った悲しみが原因だったとの見方を示している。

 動物保護団体ドルフィン・プロジェクトのリック・オバリー氏も、この解釈を支持する一人だ。イルカは人間と違って一回ごとの呼吸を意識的に行っており、生きることが耐えがたくなれば次の呼吸をやめてしまうことがあるというのが同氏の説明だ。ただし、イルカの「自殺」や「失恋」はあくまで関係者による解釈であり、死因が科学的に確定しているわけではない。

 さらに実験をめぐっては、イルカにLSDが投与されていたという噂もささやかれた。研究所が閉鎖される頃には、実験はこうした数々の論争にまみれていた。

 イルカが英語を話す日は、結局訪れなかった。だが「人類以外の知性と対話する」という夢そのものは、今も科学者たちの間で受け継がれている。

 もしピーターが本当に言葉を覚えていたら、人類が宇宙からの呼びかけに応える準備は、もう少し早く整っていたのかもしれない。地球の海で果たせなかった対話が、いつか星の彼方の誰かと実現する日は来るのだろうか。

参考:Daily Star、ほか

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