「人間が一度も話したことのない言語」をAIがゼロから創造! 既存言語すら参照しない新世界

人間がこれまで一度も使ったことのない、まったく新しい言語がAIの手によって生み出された。
音の体系から文法規則、そして語彙まで、参照する既存言語を持たずゼロから組み上げられたその言語は、映画に登場する架空言語さながらの完成度を持つという。イスラエルとアメリカの研究チームがこの成果を国際的な言語学会で発表し、AIによる「人工言語(コンランギング)」創造の新たな可能性を示した。
「音韻→文法→語彙」の3段階でAIが言語を組み立てる仕組み
研究を主導したのは、テルアビブ大学、カーネギーメロン大学、UCバークレーの研究者らだ。モリス・アルパー氏とモラン・ヤヌカ氏が共同筆頭著者を務め、ラジャ・ギリーズ氏、ガシュパー・ベグシュ氏が参加している。
チームが開発した「ConlangCrafter」というシステムは、言語を一気に作らせるのではなく、音韻体系の設計、文法規則の構築、語彙の生成という3段階に分けて進める点が特徴だ。各段階でAI自身に出力内容を見直させ、矛盾があれば修正してから次の段階へ進む仕組みになっている。
さらに単調な言語ばかり生まれないよう、ランダム生成の要素を組み込んで多様性を確保。DeepSeek-R1やGemini 2.5など、複数の大規模言語モデルでこのパイプラインを動かし、結果を比較検証したという。
母音だけの言語から、色と身振りで話す「宇宙人語」まで
実際に生成された言語の中には、ユーザー側が「子音を使わない」という条件を指定したところ、母音だけで構成された言語ができあがった例があるという。
もうひとつ注目されているのが、色の信号(研究チームは「chromeme(クロミーム)」と呼ぶ)と身振りの信号(「kineme(カイニーム)」)を基本単位とし、これらの組み合わせによって文法体系そのものを構築した、いわば「宇宙人語」のような言語だ。音声ではなく色と動作でコミュニケーションする生命体を想定した設計だという。
研究チームは、内部に一貫性を持つ架空世界の言語をゲーム開発者が作る手段になり得るほか、理論言語学において「言語機能に本当に必要な特徴は何か」を検証する実験台としても活用できるとしている。
AI生成言語は本物の「言語」と言えるのか、専門家が下した判定
生成された言語がどれだけ自然言語らしい多様性を持つかを測るため、研究チームは「世界言語構造地図(World Atlas of Language Structures)」から16の構造的特徴を選び出し、スコア化した。
その結果、単純な生成手法での多様性スコアが0.25〜0.35だったのに対し、ConlangCrafterが生成した言語群は0.56〜0.60を記録。実際の自然言語サンプルのスコア(0.43)を上回る数値となった。
加えて、生成された20の言語それぞれについて10種類の試験文を翻訳させ、博士号を持つ言語学者2名が合計およそ35時間をかけてレビューを実施したという。この研究は2026年7月2日から7日にかけて開催された計算言語学会(ACL)の第64回年次大会で発表された。
ただし研究者ら自身も限界を認めている。生成される言語はあくまで音韻・文法・基本語彙にとどまり、意味論や文字体系までは含まれない。自己修正のループを何度も回す必要があるため、計算コストが高くつく点も課題として挙げられている。
AIが紡ぎ出した言語が、いつか誰かに実際に「話される」日が来るかどうかは分からない。それでも、人間の言葉を介さずゼロから言語を組み立てるこの試みは、私たちが「言葉」を言葉たらしめている条件の輪郭を、機械の手によって浮かび上がらせる手がかりになるのかもしれない。
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