“非人間の言語”なのか… 「シエラサウンズ」の謎! 半世紀前の録音テープが今も専門家を悩ませ続ける理由

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 未確認生物の「証拠」というと、ぼやけた写真や不鮮明な足跡が定番だ。だが、目ではなく耳で捉えられた物証が、半世紀以上たった今も研究者を悩ませ続けている。

 1971年、アメリカ・カリフォルニア州のシエラネバダ山中で、2人の男が奇妙な音声をテープに刻んだ。うなり声、木を叩く音、そしてまるで会話のような意味ありげな声のやりとり。「シエラサウンズ」と呼ばれるこの録音は、のちに元海軍の言語学者によって、耳を疑う鑑定結果を突きつけられることになる。

正体を暴くはずが——猟場のキャンプに響いた咆哮

 事の発端は、シエラネバダの深い森にあった猟場のキャンプだった。ロン・モアヘッド氏と、ジャーナリストのアル・ベリー氏。この2人が、夜のテントの周囲で得体の知れない音に取り囲まれる。

 遠くから響く咆哮、地を這うようなうなり声、そして木の幹を叩くような打撃音。姿は見えない。だが、確かに「何か」がそこにいた。

 モアヘッド氏らは録音するだけでは飽き足らず、自分たちも声を出して「相手」に応じてみた。すると音の主は、こちらの呼びかけに反応するかのように声を返してきたという。

 一方通行の物音ではなく、双方向のやりとりが成立しているように感じられた——それが、彼らを最も戦慄させた点だった。

「侍のおしゃべり」——音声が帯びた奇妙なリズム

 録音された声の中で、モアヘッド氏がとりわけ強く印象づけられたのが、独特のテンポを持つ一連の発声だった。彼はそれを「サムライ・チャッター(侍のおしゃべり)」と名づけている。日本の時代劇に登場する侍たちの、早口で交わされる台詞のやりとりを連想させたからだという。

 要は「意味のある単語を、一定のリズムで区切りながら喋っているように聞こえた」ということだ。単なる動物の威嚇音や鳴き声とは、明らかに手触りが違っていた。

 興味深いのは、ベリー氏がもともと懐疑派だった点である。彼はこの音をインチキだと見抜くつもりで現場に足を運んだ人物だ。

 ところが結局、彼は生涯この録音と向き合い続けた。2012年に世を去るが、晩年になってもこの音を生み出した仕組みを解明できれば謎の核心に近づけると信じていたという。

 トリックを暴こうとした男が最後まで答えにたどり着けなかったこと自体が、シエラサウンズの一筋縄ではいかなさを物語っている。

元海軍言語学者が下した「人類のものではない」という鑑定

 この録音を、まったく別の角度から検証した人物がいる。アメリカ海軍で暗号言語の解析に長年携わってきた、退役軍人のスコット・ネルソン氏だ。暗号言語学者とは、未知の言語や暗号化された音声を、音の最小単位にまで分解して構造を読み解く専門家である。

 そんな彼がシエラサウンズを音声学的に分析した結果、驚くべき見解を示した。彼によれば、この録音の声には、人間の言語と同じように音を組み立てて意味を作る構造が備わっており、単なるノイズではなく「言語」として機能しているというのだ。

 さらに、その言語は人類のいずれの言語体系にも属さない非人間的な起源を持ち、当時の技術で人為的に捏造できるものではない、とも主張している。

 もっとも、この鑑定を額面どおりに受け取ってよいかは慎重に見極める必要がある。

 シエラサウンズについて査読を経た正式な科学的研究が行われた例はなく、主流の科学界はビッグフットの実在そのものを未検証の領域として扱っている。ネルソン氏の分析も、あくまで一人の専門家による見解の域を出るものではない。

半世紀を越えて残る「声」——誰が、何のために

 姿なき咆哮を録音した2人の男。トリックを暴くはずが逆に謎へ取り込まれたジャーナリスト。そして「人類のものではない言語だ」と言い切った元海軍の言語学者。三者三様の証言が積み重なってなお、シエラサウンズの正体は宙づりのままだ。

 未知の生物が発した言語なのか、自然界の音が偶然そう聞こえただけなのか、あるいは巧妙な悪戯だったのか。半世紀以上前のわずか数分の音声が、専門家まで巻き込みながら今なお議論の火種であり続けている。

 もし森の奥で「侍のおしゃべり」に耳を澄ませる機会があったなら、あなたはその声に返事をしてみるだろうか。

参考:Boing BoingWikipedia – Sierra Sounds、ほか

TOCANA編集部

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