AIの助言通りに荷造りしたら食料も水も足りなかった! 「聖なる山」シャスタ山で男性3人が遭難、保安官事務所が異例の警告

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 登るルートも、ザックに詰める食料の量も、生成AIに聞いて決めた。そんな計画で入山した若者3人が、暗闇の峡谷で一夜を明かす羽目になった。

 舞台となったのは、米カリフォルニア州北部にそびえる標高約4322メートルのシャスタ山。地元の保安官事務所は救助後、彼らがAIに頼りきったことを「決定的な判断ミス」と位置づけ、異例とも言える注意喚起を出している。

 そしてこの山は、オカルト・スピリチュアル界隈では世界屈指の「聖地」として知られる場所でもあった。

Ewen Denney / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons

正午の引き返し時刻を7時間オーバー、暗闇の峡谷で動けなくなった3人

 シスキュー郡保安官事務所の説明によれば、遭難したのはローズビル在住の若い男性3人。登山経験は浅かったという。

 8月29日の土曜、3人は標高約2560メートル(8400フィート)地点にキャンプを設営した。翌日曜の午前3時、日帰り用の小さなザックだけを背負って山頂を目指して出発する。

 ところが、彼らが頂上に立ったのは午後7時だった。保安官事務所が推奨している「正午までに登頂できなければ引き返す」というタイムリミットを、7時間も超過していたことになる。当然、下山は真っ暗な中での行動となった。

 出発から約1時間後、3人は道順を尋ねるために保安官事務所へ電話をかけている。それでも結局、正規のクリアクリーク・ルートを外れ、マッドクリーク峡谷へ迷い込んでしまった。

 さらに1人が転倒して膝を負傷。急峻な谷の中で身動きが取れなくなり、そのまま夜を越すことになった。

 翌朝、米森林局のクライミング・レンジャーが3人のもとへ到達して負傷者を手当てし、郡の山岳救助ボランティアも出動。全員が無事に登山口まで戻っている。

 保安官事務所によれば、マッドクリーク周辺のような危険地帯に迷い込んだ末に重大事故や死亡事案が起きた例は、過去にも複数あるという。

「8時間の予定」が数日がかりに、なぜAIの助言は破綻したのか

 救助後、3人は副保安官に対し、ルートの情報も持ち物リストもGoogleのGeminiに大きく依存していたと説明した。

 保安官事務所が問題視したのはこの点だ。当初は8時間程度で往復する想定だった行程が、結果的に数日がかりの事態へと膨れ上がったため、AIが提示した量の食料と水では全く足りなかったのである。

 生成AIは平均的でもっともらしい答えを返すのが得意だ。だが当日の残雪や気温、メンバーの体力差、そして「予定通りに進まなかった場合」の余白までは織り込めない。3人が落ちたのは、その余白だった。

 保安官事務所は再発防止としていくつかの点を呼びかけている。入山前に現地の森林局レンジャーステーションへ電話し、最新かつ正確な情報を得ること。そして、旅程の計画をAIだけに委ねないこと。

 ナビゲーション手段は複数用意し、携帯電話やGPS任せにせず現在地をこまめに確認すること。クリアクリーク・ルート自体は特別な登攀技術を要さないが、だからこそ体力と、負傷・悪天候・予期せぬビバークへの備えが必要だという。

レムリア伝説の「聖なる山」が突きつけたAI時代の教訓

 シャスタ山は、オカルトファンにとってただの高山ではない。

 1894年に発表されたフレデリック・スペンサー・オリバーの小説以降、失われた大陸レムリアの生き残りが山の地下に築いた都市「テロス」で今も暮らしている、という伝説がこの山にまとわりついてきた。1930年代にはガイ・バラードが山中で聖ジャーマンと名乗る存在に遭遇したと主張し、宗教運動の起点にもなっている。

 山頂付近に現れるレンズ雲を「UFOの隠れ蓑」と見る目撃談も後を絶たず、今なお世界中から巡礼者が訪れる。

 もっとも今回試されたのは、信仰でも神秘でもなかった。3人が頼ったのは山の精霊ではなく、手元の端末が返すもっともらしい文章のほうだ。

 そして彼らを峡谷から引き上げたのは、この山を歩き慣れた生身のレンジャーと、地元のボランティアだった。AIは登頂までの手順を教えてくれても、暗闇の中で膝を痛めた仲間を背負ってはくれない。

 地下都市の住人が一部始終を見ていたかどうかは知る由もない。ただ、山が入山者に求めるものだけは、伝説が語られ始めた1世紀前から何ひとつ変わっていないようだ。

参考:Fox News、ほか

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