【オーパーツ】古代の人工物か、宇宙から来た隕石か…… 140年間決着しない「ザルツブルク・キューブ」の謎

人類が道具を作るはるか以前の地層から、機械部品のような鉄の塊が出てきた。オーパーツ好きなら一度は耳にしたことがあるだろう「ザルツブルク・キューブ(ザルツブルクの立方体)」の伝説だ。
だが、この物体が「古代の人工物」として語られるようになる前、19世紀の科学者たちはまったく別の答えを出していた。1886年の科学誌に残された記録は、それを宇宙から来た「隕石」として扱っていたのである。
科学誌『Nature』が記録した785グラムの鉄塊
問題の物体は、オーストリアのヴォルフセッグで採掘された褐炭の中から見つかったとされる鉄の塊で、地名から「ヴォルフセッグの鉄」とも呼ばれる。
1886年10月28日号の『Nature』には、アドルフ・グルルト氏による報告と、ガブリエル=オーギュスト・ドブレ氏の所見が要約されている。そこでは、第三紀の褐炭のブロック内から発見された隕石として紹介されていた。
記録によれば、この鉄塊は炭素とニッケルを含み、重さは785グラム。当時の科学者たちは、これを自然史の枠組みの中に位置づけようとしていたことになる。
ただし、これは発表当時の見立てであって、現代の分析機関が発行した鑑定書ではない点には注意が必要だ。

「ニッケルを含まない」という後世の主張
話がややこしくなるのはここからだ。後年の紹介記事の中には、この鉄塊にはニッケルが含まれておらず、隕石ではあり得ないとするものがある。1886年の報告とは真っ向から食い違う主張だ。
ニッケルは隕石を見分ける重要な手がかりとされる。英国の自然史博物館の解説でも、鉄隕石は主に鉄とニッケルからなり、その構造や組成が分類に用いられるという。
どちらが正しいのかを決めるには、それぞれの分析がどの試料を使い、どこまで検出できる手法だったのかを突き合わせる必要がある。そもそも、検査された物体が1886年に記録されたものと同一なのかという点から確かめなければならない。
さらに厄介なのは、隕石由来の鉄と人間の手仕事は両立しうることだ。古代ギリシャでは隕鉄から作られた青銅器時代の指輪も知られている。「隕石か人工物か」は、必ずしも二者択一ではないのである。
地層の年代と物体の年代は一致するのか
「キューブ」という名前は、いかにも誰かが意図して作った物体を想像させる。だが名前は計測結果ではない。工具の痕跡があるのか、内部構造は鋳造や鍛造を示すのか、それとも自然の作用で説明できるのか。確かめるべき点はいくつもある。
太古の人工物だと証明するには、地層の年代、発見時の状況、製造の経緯という三つの歴史がすべて噛み合わなければならない。褐炭が古いからといって、そこから出てきた物体も同じだけ古いとは限らないのだ。
とはいえ、19世紀の「隕石」という判定もまた、検証を待つ一つの説にすぎない。新たな分析によって覆される可能性は十分にある。
宇宙から落ちてきた鉄なのか、近代の工業製品の破片なのか、それとも誰も想像していない来歴を持つ何かなのか。140年前の科学者たちが首をひねった鉄塊の正体は、今なお一つに絞り込まれていない。もし本当に、人類が誕生するはるか以前の地層に、何者かの手が触れた鉄が眠っていたのだとしたら。その可能性を完全に閉ざす証拠も、まだ誰ひとり手にしてはいないのである。
参考:Curiosmos、ほか
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