深い瞑想で脳の「雑音」が消えた先に何が届くのか!? 29人の脳波実験と、遠隔透視を説明しようとする大胆仮説

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 目を閉じて呼吸に意識を向け、頭の中のざわめきが静まったとき、ふだんは届かない「何か」が入り込んでくるのではないか。そんな問いをめぐり、研究者の間で議論が起きている。

 出発点は、深い瞑想が脳内の「雑音」を減らすことを示唆した脳波実験だ。その延長線上で、遠隔透視や体外離脱まで説明しようとする仮説が浮上している。

瞑想が深まるほど、脳の「信号」がクリアになる

 オックスフォード大学精神医学科の上級研究員で神経科学者のルーベン・ラウコネン博士が注目しているのは、脳の「機能的な信号対雑音比(SN比)」だ。脳活動の記録を解析すれば、ある人がバラを見ていることを一定の精度で読み取れる。瞑想中なら脳内のバラの像がより鮮明になり、読み取りやすくなるというのが同氏の考えだ。

 2026年6月、ラウコネン博士ら5人の研究チームはプレプリントサーバー「bioRxiv」に論文を公開した。対象はヴィパッサナー瞑想の経験者29人。湧き上がる感覚や思考にとらわれず、ただ観察する仏教由来の瞑想法である。

 チームは参加者に音を聞かせながら脳波(EEG)を測定し、瞑想の深さをその都度自己評価してもらった。その結果、深く入っていると答えた人ほど音に対する脳の反応が安定し、背景の神経活動から音に関わる活動を切り分けやすくなっていたという。

ハーバードの研究者が唱える「ノイズフロア」仮説

 この「雑音が減る」という発想を、はるかに奇妙な方向へ押し広げる研究者もいる。ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院の心理学研究者、ティモシー・ロマス博士だ。

 最近、脳は意識を自ら生み出すのではなく、「向こう側」と呼ばれる未知の源から受信しているとする「神経伝達理論(NTT)」をめぐって研究者らが議論の場を持った。ロマス博士もその一人で、瞑想が脳内の「ノイズフロア」を下げ、本来なら知覚できない信号を意識に届かせる可能性を提唱している。遠く離れた場所や物体を見ずに描写しようとする遠隔透視のような現象も、これで説明できるかもしれないというのだ。

 現在査読中のプレプリントで同氏が取り上げるのは、感覚入力を遮断した被験者に隠された画像を当てさせる「ガンツフェルト実験」や、熟練の瞑想者が語る体外離脱、宇宙との一体感、知り得ないはずの知識を得たという確信などだ。半分に割ったピンポン玉で目を覆い、ヘッドホンから雑音を流すという実験風景は、日本の禅寺で「無の境地」を目指す修行とどこか重なる。

 情報が届く経路の候補としては、量子の非局所性、意識を世界の根源的な性質とみる汎心論、さらにユングの「集合的無意識」まで検討されている。ただし、脳が既知の感覚を超えた源から情報を受け取れることを立証した科学者は、まだいない。

「何かを受け取った」という感覚は証拠になるのか

 ハーバード医学大学院関連のブリガム・アンド・ウィメンズ病院に所属する神経科学者デビッド・ヴァゴ博士は、この解釈に大きな問題があると指摘する。深い瞑想は、心理学者ウィリアム・ジェームズが「ノエシス的性質」と呼んだ、何かが圧倒的に真実だという感覚を生むことがある。幻覚剤や発作、感覚遮断でも同様の体験は起こり得るため、強烈な実感だけでは外部の送り手がいる証拠にならない、というのが同氏の見方だ。

 博士は検証の条件として、成功の基準を事前に決めること、偶然を排除できる試行回数、被験者にも研究者にも答えが漏れない設計、独立した追試を挙げる。過去の遠隔透視や予知の主張は、これらを通過できなかったという。

 一方のラウコネン博士は、長期の瞑想者の脳は情報処理が効率的で反応も速いという知見に触れつつ、科学者として心を開いておくべきだとの立場を示す。意識についてはまだ全貌が分かっておらず、今後も多くの「説明のつかない現象」が見つかるだろうとも語っている。

 雑念が消えた静寂の中に、まだ名前のない信号が潜んでいるのか。古来の修行者たちが「無」の先に見たというものが脳の作り出す意味なのか、それとも別の何かなのか。少なくともその問いは、科学の扉の外に締め出されたわけではない。

参考:Popular Mechanics、ほか

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