【TOCANA的UMAファイル #27】「レイク・ワース・モンスター」 ── 犯人を名乗る者が何人現れても、正体が決まらないヤギ男

1969年の夏、テキサス州フォートワース郊外の湖に“半人半ヤギ”の怪物が現れた。それから半世紀、「あれは俺たちだった」と名乗り出る者が何人も現れたのに、事件はいまだに片づいていない。犯人が多すぎるUMAなのである。
基本データ
名前:レイク・ワース・モンスター(Lake Worth Monster)。ゴートマン(ヤギ男)とも呼ばれる
生息地:米テキサス州フォートワース郊外、レイク・ワース湖畔のグリア島周辺(現・フォートワース自然センター)
初出:1969年7月
姿:毛とウロコに覆われた半人半ヤギ。身長2メートル超、体重110〜140キロほどとする証言もある
事件簿
1969年7月10日、地元紙フォートワース・スター・テレグラムは「魚っぽいヤギ男、レイク・ワースで駐車中のカップルを恐怖に陥れる」という見出しを掲げた。前夜、湖畔に車を停めていた夫婦が、木の上から車に飛び降りてきた怪物に襲われたと訴え出たのだ。警察はパトカー4台で捜索したが、何も見つからなかった。
翌晩、怪物は崖の上から哀れな鳴き声をあげ、見物人に向かってタイヤを投げつけたと伝わる。飛距離は500フィート(約150メートル)。以後、ライフルや拳銃を手にした素人の追跡者が何百人も押し寄せ、警察は怪物より群衆のほうを心配したという。
そして秋、ただ一枚とされる写真が撮られる。深夜1時すぎ、湖畔の道を車で走っていた男性が、道ばたで立ち上がった白い毛むくじゃらの影をポラロイドに収めたのだ。撮影日は10月とも11月ともいわれている。

ホントカナ?
正体候補は、ボブキャット、同じ夏に犬舎から逃げたというサル、そして本命の高校生のいたずらだ。新学期が始まると騒ぎが静まったからである。
実際、名乗り出る者は後を絶たない。騒動を最初に報じた記者は1989年、ゴリラの着ぐるみを持っていた高校生たちが警察に事情を聞かれたと語った。2005年には地元紙に「同級生3人でアルミホイルの仮面を作って脅かした」という、別の高校の出身者を名乗る匿名の手紙が届く。タイヤについても「弟と坂から転がしただけ」と打ち明けた少年がいたそうだ。
だが、証言を全部足しても話は合わない。着ぐるみとアルミホイルをどう組み合わせても「ウロコのある魚っぽいヤギ」にはならない。しかも騒ぎは新学期で終わったはずなのに、唯一の写真は秋の深夜に撮られ、写っているのは白い毛の塊なのだ。
極めつけは懸賞金である。1969年9月に怪物の本を自費出版した作家サリー・アン・クラークは、「自分が怪物だ」と言って嘘発見器を通った者に5000ドルを払うと呼びかけた。夫によれば、電話は一本も鳴らなかったという。匿名の手紙は届くのに、賞金を取りに来た“犯人”はいない。犯人候補が増えるほど、ヤギ男の正体は遠のいていく。
TOCANA的まとめ
なぜフォートワースで、このヤギ男はここまで愛されてきたのか。2003年にこの話を取り上げた州の野生生物誌の記者は、タイヤ少年の名前を知りながら追及しなかった。「伝説の怪物は、未解決のミステリーのままのほうがずっと面白い」からだという。
街もこの姿勢を受け継いでいる。自然センターでは秋にモンスター・バッシュが開かれ、ヤギ男の発見トレイルや「モンスター・タイヤ投げ」が楽しめる。2026年夏には足跡や“毛のサンプル”が市庁舎に並んだ。犯人探しより、グリア島の森を歩いてみたくなる。それがこの街のヤギ男とのつき合い方なのだろう。
トリビア
レイク・ワースの怪物騒ぎには“前科”がある。1947年にもこの湖で「大蛇」が目撃されたが、ボート工場の従業員が滑車と釣り糸でタイヤのチューブを浮き沈みさせたいたずらだったそうだ。ヤギ男の22年前から、この湖の怪物はタイヤと縁が深いようだ。
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