【ガザ攻撃】外交官が語った、イスラエルとハマス ― 日本人が知らない“暴力と憎しみの背景”

 イスラエル軍は7月7日より、パレスチナ暫定自治区のガザに対して大規模な空爆を継続している。すでにパレスチナ側の死者は100人を越え、今後の地上侵攻も懸念されている。現在のガザを支配するハマスとは一体どんな団体か、またイスラエルはどうして一般市民の犠牲も厭わない軍事作戦を繰り返すのか。日本人にとって分かりにくい中東紛争の背景について、旧知の外交官に話を聞いた。

【ガザ攻撃】外交官が語った、イスラエルとハマス ― 日本人が知らない暴力と憎しみの背景の画像1画像は「THE INDEPENDENT」より


■複雑な歴史

アラブ・イスラム・中東用語辞典』(成甲書房)によると、今回イスラエルの攻撃を受けているガザ地区は、交通や交易の要所として、歴史上何度も大国間で争奪の対象となってきたという。中東に詳しい外交官は、まずこの地域の複雑さについて次のように語った。

「中世、ガザがテンプル騎士団の所領となっていた頃、暗殺教団として知られるイスラム教ニザール派の住民が彼らの小作農として働いていたことがあります。奇妙な呉越同舟というわけです。ことほどさように中東では、宗教とか人種の違いという表面的な視点からでは理解できないことがたくさんあります」

 ガザ地区が現在の地理的範囲に確定されたのは、1948年に起きた第一次中東戦争のときだ。その前年に採択された国連総会決議第181号により、当時イギリス委任統治領だったパレスチナは、ユダヤ人地域とアラブ人地域に分割されることになったが、ユダヤ人側がこの決定を受け入れた一方、アラブ人側は認めなかった。そして1948年のイスラエル独立宣言を機に、周辺アラブ諸国が攻め込んだのだ。

「当時のアラブ諸国にしてみれば、国連でユダヤ人地域とされた部分も含め、帰属のはっきりしてこなかったパレスチナの地を、早い者勝ちで山分けしようと目論んだというのが本音でしょう。しかし結果はイスラエルの勝利に終わりました」(外交官)

 戦争の結果、イスラエルは国連総会決議が認めた範囲を越えて、パレスチナの大部分を支配した。アラブ人側は敗戦後、自分たちが当初無視したこの決議を持ち出したが、すでに後の祭りだったのだ。そして一部は他国に奪われ、支配を受けることとなったが、この時エジプトが支配した領域が、現在のガザ地区なのだ。その後、1967年の第三次中東戦争を経て、イスラエルがガザ地区を占領。そこで状況に変化が生じる。

「ガザと他の地域でそれぞれ活動していたイスラム原理主義組織『ムスリム同胞団』が、相互に交流を始めました。そしてイスラエル政府も、PLO(パレスチナ解放機構)に対抗させるため、ムスリム同胞団の活動を支援したのです」(外交官)


■武装抵抗組織ハマスの誕生と現状

 その後1987年にパレスチナ住民蜂起「インティファーダ」が起きると、再び状況が変化する。イスラエルに支援されていたはずのムスリム同胞団が、武装抵抗組織として「ハマス」を結成したのだ。やがて1993年のオスロ合意に基づいて「パレスチナ自治政府」が樹立すると、イスラエルは自治政府との合意により2005年にガザ地区から撤退。しかしその直後から、ガザ地区ではハマスと自治政府との対立が鮮明となる。そしてついに2007年には、イスラエル国家の殲滅を旗印とするハマスが実力でガザ地区を実効支配するようになり、現在に至っているのだ。

「イスラエルはガザから撤退した後も、2006年と2008年の2回、ガザ地区に侵攻しています。2006年はイスラエルのミサイルが誤ってガザに着弾し、死者が出たことで双方の戦闘が激化しました。2008年末には、ハマスのロケット攻撃が原因で大規模な衝突となりました。しかしまともに戦闘を行えば、ハマスが中東最強のイスラエル軍にかなうはずもありません」
「現に2008年末から翌年にかけてのイスラエルのガザ侵攻では、イスラエル側の死者が13人であるのに対し、パレスチナ側は民間人も含め1,300人以上が犠牲となっています。倍返しどころか100倍返しがイスラエルのやり方なのです。他方パレスチナ側は、イスラエルの無差別攻撃で死亡した民間人の惨状をメディアに流すことで、イスラエルの非道を世界に訴える戦術を繰り返しているのが現状です」(外交官)

アラブ・イスラム・中東用語辞典

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