先住民か渡来人か? 「ケネウィック人」のルーツ論争が遂に決着!?=アメリカ
1996年に米・ワシントン州ケネウィックのコロンビア川湖畔で偶然発見され謎の人骨――。「ケネウィック人」と名づけられたこの骨の生前の姿はインディアンの祖先なのか、あるいは別の場所からやってきた渡来人なのか、長く続いていた論争に一応の決着がつけられようとしている。
■DNA分析「ケネウィック人はネイティブアメリカンの祖先である」
デンマーク・コペンハーゲン大学の古生物学者、エスケ・ウィラースレフ氏が主導する研究チームが6月18日の「Nature」オンライン版で発表した論文は、「骨の遺伝子を分析した結果、ケネウィック人はネイティブアメリカンの祖先である」と結論づけた。ネイティブアメリカンの中でも特にコルビル族(Colville tribe)ときわめて近い関係があり、ケネウィック人が直接の祖先であると考えられるということだ。
アメリカで発見された9000年前の骨がネィティブアメリカンの祖先のものだった――。特に疑問もないことのように感じられるニュースだが、なぜこんなにも大きく報じられているのか……。そこには発見当初から巻き起こった激しい論争があったのだ。
発見当初の「ケネウィック人」はせいぜい数百年前のアメリカ人の遺体と思われていた。頭蓋骨の形や高い鼻から白人のものだと見なされていたのである。
しかし炭素年代測定を行なってみると9000年ほど前の古代人の骨ということが明らかになり、学者たちの注目を集めることになった。そこには、ケネウィック人がネイティブアメリカンよりも先にアメリカ大陸にいた“正真正銘の先住民”であるかもしれないという期待が無かったと言えば嘘になるだろう。
しかしネイティブアメリカンの団体は、このケネウィック人は当然我々の祖先であると主張。開拓時代以前の遺体はネイティブアメリカンに帰属するため、その伝統に従ってこのケネウィック人は再び手厚く埋葬されなければならないというのが彼らの言い分だ。
しかし、スミソニアン研究所のダグラス・アウズリー氏をはじめとする科学者たちはさらなる調査分析が必要であるとして、ケネウィック人の骨を研究継続のために保管すべきであると反論。これが最終的には法廷闘争に持ち込まれ、2002年に裁判所は、「ネイティブアメリカンの祖先がケネウィック人であるとは判断できない」として、科学者たちの言い分に軍配をあげることになる。上訴の末に2004年に再び同じ判決が下され法律上の決着を迎える。
以来、長らくケネウィック人の骨は謎のまま学術資料として保管されることになったが、事が動いたのは昨年のことだった。今回の論文を発表したコペンハーゲン大学の研究チームが、ケネウィック人の骨のDNA調査に乗り出したのだ。そして昨年の段階で「ケネウィック人はネイティブアメリカンの先祖であることが濃厚である」という見解を発表している。この発表により、ネイティブアメリカンの団体、特にワシントン州に居留地のある「コルビル族保護部族連合(Confederated Tribes of the Colville Reservation)」が再びケネウィック人の骨の返還要求を検討しはじめたのだ。
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