社会の敵ランキング1位・最凶の麻薬王エル・チャポの「大脱獄劇」! 彼の生き方、逃げ方、メキシコの闇(総まとめ)
■地元の英雄
メキシコをはじめ、世界中で指名手配されるチャポだが、地元シナロアや近隣地域では一部住民からは英雄視されている一面もある。2014年にチャポが再逮捕された際には、数回に渡り1000人以上のチャポ支持者が、彼の釈放を求めてデモ行進を行い、警察と衝突して200名上の逮捕者を出すなど大きなニュースになった。
デモに参加した市民らは「チャポは貧しい人々を支援する組織を立ち上げてくれたり、私達市民の側に立っていろんなことを手伝ったりしてくれた」と公然とチャポを応援。Tシャツやキャップなどチャポの関連グッズも販売されていた。
シナロア県知事のマリオ・ロペス氏は「今回のデモの動員は、チャポの親族やカルテルが、参加者に現金や食料、酒を振る舞うなどして集めた見せかけの支持者だ」と語っているが、それを差し引いても地元民のチャポに対する信頼は思いのほかあつい。
さらに、シナロア・カルテルの支配力が弱まり、麻薬戦争やカルテル同士の抗争が激化することを恐れる住民がチャポを支持しているという側面もある。
■チャポ脱獄劇が浮き彫りにした社会問題
なぜチャポがこれほど大きい麻薬帝国を築き上げたか、そしてなぜチャポが二度に渡り逮捕・脱獄を繰り返したか。そしてなぜ未だにチャポは捕まえられないのか。
これらがこの事件の見る上で大きなポイントとなる。
今回の脱獄で面目を大きく傷つけられたのは、メキシコ政府、特にメキシコ大統領エンリケ・ペーニャ・ニエト氏であることは間違いない。逮捕時に自身のツイッターで高らかに勝利宣言し、アメリカの身柄引き渡し要望を拒否して国内最高レベルの刑務所に収監したものの、僅か1年半で見事に脱獄を許してしまうという大失態を見せてしまった。
そしてこの脱獄劇に加担した刑務官、刑務所幹部、警察、軍幹部や政治家など、メキシコ内部の腐敗がどこまで及んでいるのかも把握できない状況だ。
また、チャポが逃走で身を隠している間に、新興の麻薬カルテル間の抗争はより激化し、ある意味で統率が取れていた麻薬密輸ビジネスが再び群雄割拠の混乱状態に陥る危険性も高まっている。
つまり、チャポの再脱獄が浮かび上がらせたのは、単なるメキシコ刑務所の警備上の問題ではなく、国としての危機管理体制、治安を守る警察や軍、司法の独立性が危ぶまれているという状況であり、そしてアメリカにとっては流入を食い止める手段もないコカインビジネスのカオス化、南米にとってはコカイン原料のコカの葉生産と精製ビジネスの再構築、といった幅広い影響が予想される。
はたして、チャポが捕まることで事態は解決するのか。それともより混乱するのか。
(文=ラウタ郎)
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2024.10.02 20:00心霊社会の敵ランキング1位・最凶の麻薬王エル・チャポの「大脱獄劇」! 彼の生き方、逃げ方、メキシコの闇(総まとめ)のページです。麻薬、脱獄、ラウタ郎、エル・チャポなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで