社員が次々と死亡・負傷する謎のビルで働く男の実話がヤバイ! 実話怪談「忌み地に就くべからず」

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イメージ画像は「Getty Images」より引用

 田村さんは河野さんのポジションを継いで、リーダーシップを発揮していた。

 沈着冷静で声を荒げることのない、クレバーでスマートな上司としてスタッフから慕われていたが、深夜、帰宅した自宅の玄関ポーチで倒れ、翌朝、家族に発見されたときにはすでに冷たくなっていたという話だ。

 会社から何かに追いかけられ、家の中に逃げ込む寸前に捕まってしまった――そう見えないこともない、我が家のドアの方に片手を伸ばした不自然な姿勢で倒れ伏して亡くなっていたのだという。

 田村さんの後は井原さんが継いだ。

 塔山さんは新しく補充されたスタッフを指導しながら、相変わらずシフト制でときどき夜勤する日々を続けた。

 ある日の夕方、夜からの勤務で出社したところ、まだ井原さんがオフィスにいた。エンジニアは全員帰って、彼ひとりだ。田村さんが使っていたデスクのそばに屈んで、引き出しの中を探っている。

「お疲れ。残業?」と塔山さんが声を掛けると、顔も上げずに「田村さんのファイルが見つからないんだよ」という返事。

「今すぐ要る物なのかい? 探すのを手伝おうか?」
「いや、大丈夫。あっちで新人が待ってるから早く行きなよ」
「そうだな……。本当に困ったら呼んでね」

 10分も経った頃だろうか。

 突然、パーテーションの向こうで、平たいものが床に倒れるか落ちるかした音がした。井原さんの方だ……と、塔山さんが振り返ると、今度は「アッ」と大声がした。井原さんの声だった。

「どうした?」と塔山さんは呼びかけながら駆けつけた。

 資料棚の扉が開いていて、その前に、井原さんが両手で分厚いファイルを持って立ちすくんでいた。

「田村さんのファイル、見つかったの?」

 井原さんは呆然とした顔のまま、塔山さんを振り向いた。

「うん。……落ちてきた
「落ちてきた? その開いてる棚から?」
「田村さんのデスクのところにいたら視線を感じて、こっちを向いたら、ここにこんな棚があった。僕はこの棚には触ったこともなかったけれど、エンジニアの人たちは使っていた可能性が高い。だから、もしかすると田村さんはファイルをここにしまったのかもしれないと閃いて、扉を開けたんだ。そしたら……落っこちてきた! 勝手にこのファイルが水平に飛び出してきたんだ。中を見たら、間違いなくこれが探していたファイルだったよ。きっと田村さんが教えてくれたんだ。一見クールだけど、心の温かい親切な人だったから」

 田村さんの気配は四十九日を過ぎると消えた――と、塔山さんは井原さんから聞かされたが、彼自身は何の気配も感じられなかった。

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