社員が次々と死亡・負傷する謎のビルで働く男の実話がヤバイ! 実話怪談「忌み地に就くべからず」
作家・川奈まり子の連載「情ノ奇譚」――恨み、妬み、嫉妬、性愛、恋慕…これまで取材した“実話怪談”の中から霊界と現世の間で渦巻く情念にまつわるエピソードを紹介する。
【20】忌み地に就くべからず(後編)
(前編はコチラ)(中編はコチラ)※社員が次々と負傷したり、謎の怪奇現象が多発する奇妙なビルで働くことになった塔山さん。霊感をもつ社員も「このビルはヤバイ」と確信。そんな中、謎めいた雰囲気をもつ同僚の河野さんが美人妻と結婚し…。
冬になると、河野さんは時折、家庭の悩みを漏らすようになった。
どうも、義理の息子とうまくいっていないらしい。再婚した妻が若いときに生んだ一人息子で、もう中学校3年生なのだという。
微妙な年頃に母親が再婚して、しかも高校受験を控えている少年。
河野さんは前妻との間に子どもがなく、子育ての経験はこれが初めて……なのに、いきなり反抗期の子どもを育てることになったわけである。
親子どちらもピリピリしているのではないか。誰が聞いてもそんな想像がすぐについた。
河野さんについて最もよく知る田村さんから聞いたところでは、息子の学校の成績や模試の結果が良くなかったことに河野さんは腹を立て、ときどき手を上げているとのことだった。
気になる話だが、所詮は他人の家庭だ。ましてや反りが合わない河野さんについてだから、塔山さんは、しばらくするとそんなことは忘れてしまった。
そのうち技術面のトラブルが発生して、それどころではなくなった。
折悪しく、トラブル発生がちょうど金曜の夜で、土曜日になっても終息せず、エンジニアが全員詰めるようなことになった。塔山さんたちも無関係ではいられず、特に責任ある立場の井原さんと塔山さんは現場にいる必要があり、交互に休みながら土日も出勤することにした。
土曜日、前の日から徹夜していた河野さんが午後6時に退社した。
「明日の朝9時に来る。何か変わったことがあったら連絡してくれ」
そう田村さんに言い置いて、酷く暗い顔をして帰っていったのだった。
塔山さんは日曜に休んだので、ここから後は、週明けに井原さんから聞いた話だ。
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2024.10.02 20:00心霊社員が次々と死亡・負傷する謎のビルで働く男の実話がヤバイ! 実話怪談「忌み地に就くべからず」のページです。東京、怪談、川奈まり子、情ノ奇譚、オフィスビルなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで