「やはり客観的現実は存在しない」「現実は複数存在」 一流科学雑誌に掲載された最新研究が興味深い!

 客観的な現実は存在しないことが科学的に証明された。

「世界は人間なしに存在するか?」。この問いにYESと答えるのが“実在論”、NOと否定するのが“観念論”であるが、実在論の方が常識に合致する考え方だろう。いまこの瞬間に人類が絶滅しても、太陽や月の運行は変わらず続いていく……。だが、客観性へのこの素朴な信頼を根底から覆してきたのが、20世紀に登場した量子力学である。そして今年に入り、量子力学に基づいて「客観的な現実は存在しない」ことを証明する実験が行われたのだ。その詳細はトカナで報じているが、この度、同研究が世界的に権威のある超一流科学雑誌「Science」のオープンアクセスジャーナル「Science Advances」に掲載され、再び世界中から注目を集めているのだ。

・「Science Advances

 以下、同研究の概要を報じた過去記事を再掲する。

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「やはり客観的現実は存在しない」「現実は複数存在」 一流科学雑誌に掲載された最新研究が興味深い!の画像1
画像は「getty images」より引用

 客観的現実は存在しない――量子論の実験結果に世界中に衝撃が走っている。

 1961年、ノーベル物理学賞の受賞経験を持つユージーン・ウィグナーは、「ウィグナーの友人」と呼ばれる量子論にまつわる奇妙な思考実験を行った。それはこういうものだ。

■ウィグナーの友人

「やはり客観的現実は存在しない」「現実は複数存在」 一流科学雑誌に掲載された最新研究が興味深い!の画像2
ユージーン・ウィグナー。画像は「Wikipedia」から引用

 ウィグナーの友人は実験室で量子のスピンの向き――回転軸が縦軸であるか横軸であるか―を測定する。量子は観測される以前は縦軸の可能性も横軸の可能性もある重ね合わせの状態であるため、実験室から遠く離れた自宅にいるウィグナーにとって、実験室の量子はどちらの可能性も併せ持つ。ここで実験を終えたウィグナーの友人が電話で「実験が終わった」とウィグナーに伝えたとしよう。この時、ウィグナーの友人にとっては量子のスピンの向きは決定しているが、ウィグナーにとっては重ね合わせの状態が事実であり、(友人が結果を伝えない限り)測定はされていない。すると、この量子は2つの現実を持つというパラドックスに陥る。

 思考実験「ウィグナーの友人」はこれまで“思考実験”にとどまっていたが、米マサチューセッツ工科大学が運営するメディア「MIT Technology Review」(3月12日付)によると、昨年オーストリア・ウィーン大学のカスラブ・ブルックナー氏が、これを実験室で再現する方法を思いついたという。そして今年に入り、英ヘリオット・ワット大学の博士課程に在籍するマッシミィアーノ・プロイエッティ氏が実際に実験を行い、量子もつれ状態にある6つの光子を使用し、2つの現実を生み出すことに成功したそうだ。ウィグナーの予想は完全に当たっていたのだ。

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画像は「MIT Technology Review」より引用

 するとただ1つの現実というものは存在せず、それぞれの観測者にとっての諸現実が存在するということになるだろう。すると普遍的な真理があるという前提のもとに立つ自然科学の探究は窮地に陥ってしまう。科学の営みはまったくの無駄だったのか……。