音楽の演奏中「ミュージシャンとリスナーは神経レベルでシンクロ」ライブの一体感はガチだった(脳科学)!

「音楽が好まれるのは、制作者とリスナーの脳が一時的に調整されたネットワークでつながることであり、リスナーは演奏者の意図を認識し、音楽演奏に関連するポジティブな感情を示します」と研究チームは言及している。

 つまり音楽の好みはミュージシャンと脳活動が一致する体験によって醸成されるということになる。楽曲ももちろん重要だが、ミュージシャンとの一体感を味わう体験が人気を大きく左右しているのだ。

画像は「Wikimedia Commons」より

 

■好きなミュージシャンは自分がなりたい対象

 血流の動きだけでなく、聴覚に関与する脳領域である左側頭皮質と、右下前頭皮質、中心後皮質が含まれる。左側頭皮質は音のリズムの処理に関連しており、ほかの2つの領域は他者の立場になって物事を理解するなどのソーシャルな対人交流の能力に関わっていると考えられている。つまり心地よい音楽体験は、そのミュージシャンに成り変わって楽しんだ体験でもあることになる。

 研究ではもう1つの注目すべき相関関係も見つかった。1つの音楽が平均してどれほど気に入ったか(リスナーの評価による)についてと、聴覚全体としての左側頭皮質における脳活動の一致度合いに、より強いレベルで関係がみられたのだ。つまり好きな楽曲であるほど、パフォーマーとリスナーの脳活動はより強い一致をみせているのである。

 こうしたことから、好きなミュージシャンの好きな曲というのは、自分がその身になってパフォーマンスをしてみたいミュージシャンであり楽曲であることになる。そして実際、“脳内”ではそれに近い体験をしているのだ。

画像は「Wikimedia Commons」より

 研究チームは今回の研究はまだ初歩的な段階のものであることを認めているが、将来の研究のための興味深い発奮材料になる可能性があり、音楽と脳活動に深い結びつきがあるというこれまでの研究を支持するものにもなっていると言及している。また親と赤ちゃんの脳、あるいは会話をしている2人の脳で、同様の種類の脳のシンクロが発生していることも報告されている。

「この研究は音楽鑑賞に対する私たちの理解を深めます。これらの調査結果は、聴衆とパフォーマーの間の神経同期が音楽パフォーマンスの肯定的な受容のための基礎となるメカニズムとして役立つかもしれないことを示唆しています」(研究論文より)

 好きなミュージシャンは自分がなりたい対象なのだと考えてみると、ポピュラーソングの人気の理由がよりよく理解できそうだ。

参考:「Science Alert」ほか

文=仲田しんじ

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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