【世田谷一家殺害事件20年目の真実】犯人は朝まで家にいなかった可能性、致命的な捜査ミス…最恐の未解決事件「迷宮の歪んだ真実」(前編)

〜裏社会や警察事情にも精通する作家・ジャーナリストの沖田臥竜による緊急掲載シリーズ・最も不可解で謎に満ちた未解決事件~

成城警察署入り口には今も情報提供を呼びかける掲示がある


■事件発生、そして長い年月が変えたもの

 街の至るところに設置された防犯カメラ。今では特段、珍しくもない光景だが、防犯カメラの設置が本格的に進められたのは、ある事件がきっかけだった。その事件とは、2000年12月30日に東京都世田谷区上祖師谷3丁目で発生した一家4人強盗殺人事件。通称「世田谷一家殺害事件」として知られている。

 事件が起きたのは、20世紀の終わりを間近に控えた2000年12月30日の夜。東京都世田谷区上祖師谷3丁目の宮澤みきおさん(当時44歳)の2階建て住宅に何者かが侵入した。一帯は都内でも人気のある世田谷区の閑静な住宅街。高級住宅地として知られる成城にも近く、宮澤さん宅があったのも、緑が多く、川沿いに大きな一戸建て住宅が建ち並んだ、比較的裕福な人たちが多く住むエリアだった。

 犯人は、自宅にいたみきおさんと妻の泰子さん(当時41歳)、長女にいなちゃん(当時8歳)、長男礼くん(当時6歳)を殺害。翌31日午前10時50分ごろに、隣に住んでいた泰子さんの母親が発見し、事件が発覚した。警視庁捜査一課は、すぐさま強盗殺人事件として成城警察署に特別捜査本部を設置したが、現在に至るまで未解決のまま。毎年のように事件解決のための情報提供が呼びかけられ、多額の懸賞金もかけられ、ポスターは日本中の警察署や交番に貼られている。日本殺人事件史の中で、最も有名な未解決事件の一つといえるだろう。

殺害された宮澤さん一家。画像は「警視庁」より引用

 事件発生から20年目を迎えた現在。周囲の宅地は東京都が買い上げて公園となっている。だが、事件現場となった宮沢さん宅だけは、歳月と共に老朽化が進んだものの、今もそのままの姿で残っている。

 時と共に変わったこともある。これまでは年末になると、警視庁幹部が現場を訪れて献花をし、手を合わせて事件の解明を誓うのが恒例となっていた。それは2年ほど前から取り止められているようだ。また、特別捜査本部が設置された成城警察署では、24時間体制で警察官が家屋前を見張ってきたが、それも2019年中に撤収したらしい。同時に、警視庁は事件に関する証拠類は全て保全し、今後の捜査に支障はないとして、現場住宅の取り壊しを遺族に打診した。もっとも、遺族の1人である泰子さんのお姉さんが「社会の中で事件の記憶の風化が進んでしまう」との危惧から取り壊しの撤回を求めたことで、結論は先送りされた。結局、現場の住宅は現在も残されたままになっている。

 現在、被害者一家に近しい遺族としてご健在なのは、事件解決のために積極的にメディアに登場してきた泰子さんのお姉さんと、みきおさんのお母さんの2人だけとなる。だが、2人の間には交流はほとんどないようだ。

 みきおさんのお母さんは、とにかく犯人が逮捕されることだけを願い、メディアに登場する機会は決して多くない。事件の節目となる年末にわずかな時間カメラの前に立って、解決を願う気持ちと情報提供を求める短いコメントを発するだけだ。それに対し、泰子さんのお姉さんはペンネームで本を出版したり講演会を開催したりと、積極的に活動を続けている。事件の解決という目的は同じだが、2人の立ち位置はかなり異なっている。

 一般的に、殺人事件の遺族がメディアに頻繁に登場するケースは多くない。解決を願って捜査には協力をしても、世間に対して声を上げるのは負担も大きい。もちろん、それは決して責められるものではない。犯罪被害者の遺族には遺族にしか分からない感情が存在し、「そっとしておいて欲しい」というご遺族も少なくない。

 ただ、泰子さんのお姉さんは少し違った。自ら積極的にメディアに登場し、被害者らの遺品などを公開。講演会を開いたり本を出版したりした際は、必ずマスコミにも取り上げられた。その中で、泰子さんのお姉さんの意に沿わない放送をしてしまったことで、泰子さんのお姉さんから叱責を受けた某TV局もあった。もちろん、そういった振る舞いも、ただただ事件解決を願っての主張である。誰が咎めるものでもない。

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