コロナ対策でマスクを着ける法曹人に正義を執行できるのか? 東大教授が科学的真理を解説!
「科学的真理より気分、同調、感情」というベクトルは、マスコミの特徴です。視聴率を取るには、人々が思い込みやすい事柄を肯定的に扱うのが得策ですから。とりわけワイドショーでは、「PCR検査」が盛んに取り上げられ、「日本ではなぜ検査が少ないのか、もっと増やせ」と叫ばれました。医学に疎いコメンテーターだけでなく、感染症学、公衆衛生学の専門家と称する人までが、「増やせ、増やせ」と煽り立て、挙句の果ては「国が検査を増やさないのはデータを独占したいから」などと陰謀論まで展開しました。もともと危機感が薄い素振りだった安倍政権が「感染防止に本腰を入れていないのでは」という一般人の懸念に付け込んだ、悪質な扇動と言うべきです(番組の方針への迎合、というのが正しいでしょうが)。
一見、次の意見は正しそうです。「日本では感染者が少ないと言うが、PCR検査そのものが少ないのだから感染者が発見されないのは当り前ではないか。もっと検査を増やして本当の感染者数を突き止めろ」。……「感染者数」にこだわる民間感覚は、国会で福山哲郎議員が専門家会議副座長に対して恫喝まがいの質問をしたあの光景によく表れています。
日本でPCR検査の件数が増えなかったのは、そもそも症状を訴える人が少なかったからです。無症状者も含めランダムにPCR検査をすべきだ、という主張もなされましたが、それが無意味どころか有害であることは、簡単な計算でわかります。
PCR検査の感度はせいぜい70%(感染者が陰性となる確率30%)。特異度はかなり高く、99%(非感染者が陽性となる確率1%)。日本国内の大多数、たとえば1億人がPCR検査を受けた場合、偽陰性と偽陽性の人数は次のようになります。
偽陰性……〈感染者数×0.3〉人
偽陽性……〈(1億-感染者数)×0.01〉人
感染者をかりに10万人とすると、偽陰性は3万人。偽陽性は約100万人。
これでおわかりでしょう。「全員に検査をすれば正確な感染者数がわかる」というのは錯覚なのです。3万人もの感染者が「自分は陰性」と安心して動き回って感染を広げ、100万人もの未感染者が病院やホテルに隔離されることになる。人道的によろしくないのみならず、医療崩壊を招くのは間違いないでしょう。PCR検査は、新型コロナらしき症状を訴えてきた患者とその濃厚接触者(事前確率の高い人)に限定するべきなのです[1]。
[1] 「事前確率」に基づくこの理屈は、ちょうど1年ほど前、『トカナ』で解説した。https://tocana.jp/2019/07/post_102378_entry.html
なお6月7日、「夜の街」従業員に定期的PCR検査をする方針を都と国が発表した。対象者を絞ったその種の検査なら有害とは言いきれないものの、費用対効果は疑問。たとえば、肺炎球菌感染症(国内で毎年10万人以上死亡)に対してすら、そこまでやりますか?
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2024.10.02 20:00心霊コロナ対策でマスクを着ける法曹人に正義を執行できるのか? 東大教授が科学的真理を解説!のページです。マスク、東大、超スカトロジスト時評、新型コロナウイルス、PCR検査などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで