強制収容所、ジプシーの熊使い、ニナ・ハーゲン…写真家・石田昌隆インタビュー!
写真家・石田昌隆インタビュー!強制収容所、ジプシーの熊使い、ニナ・ハーゲン… ベルリンの壁崩壊から30年間世界を巡った音楽の旅の記録
――壁崩壊後の様子はどうでしたか?
石田「2度目は、トルコのイスタンブールから東欧をまわってベルリンに行こうとしていました。トルコにいるときにルーマニアの独裁者チャウシェスクが殺されて、秘密警察と市民との銃撃戦が起こり、千人規模の死者が出ていました。それでルーマニアにも行ってみました」
――うわぁ、かなり危険だったんじゃないですか?
石田「あんな世界の報道の現場みたいなところに居合わせたのは初めてでした。ルーマニアに入ったのは、チャウシェスクが殺された1週間後、観光客は全然いなくて、世界中からジャーナリストが集まってきていました。街中のあちこちの人が亡くなった場所にロウソクが立ててありました」
――チェコのビロード革命で、ビロード(=ヴェルヴェット)という名前がロックバンドのヴェルヴェット・アンダーグラウンドから取られたというのはとてもいい話ですね。
石田「その革命のリーダーで、のちにチェコソロヴァキアの大統領になったヴァーツラフ・ハヴェルは、1968年のプラハの春の直前に、劇作家としてニューヨークを訪れて、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの『ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート』というレコードを買って帰国しました。プラハの春はソ連の介入で失敗に終わり、チェコソロヴァキアの自由化は遠のくけど、ハヴェルが持ち帰ったレコードはカセットにダビングされて密かに出回って、のちに革命の名前につながったといいます」
――大統領となったハヴェルがヴェルヴェットのルー・リードと交流しているという話も音楽と歴史との強い結びつきを感じました。そのあとに、ベルリンを再訪していますね。
石田「ベルリンの壁って、1枚の壁じゃなく、2枚の壁の間にはだいたい50メートルくらい緩衝地帯があって、その帯状のスペースは東ドイツ領だったんです。そこを東ドイツの国境警備隊が警備していて、壁を越えようとする奴がいたら射殺していたわけだけど、壁が崩壊してからは、そこはだだっ広い空き地になっていました。特に、ブランデンブルグ門からポツダム広場にかけては、緩衝地帯の幅はもっと広くて200メートルくらい、みんなが羽目外して宴会をやったあとが残っていたりしてね」
――僕が最初にベルリンに行ったのは1998年ですが、まだ残っていた壁を観ることができました。
石田「90年代になると、ペルリンにはテクノやラブパレードが出てきました。特に90年代後半が全盛期で、98年には石野卓球が参加したし、テクノが好きな人にとって、ラブパレードは思い入れのあるイベントでしょうね」
(つづく)
<後編はこちら>
【写真集情報】
石田昌隆『1989 If You Love Somebody Set Them Free
ベルリンの壁が崩壊してジプシーの歌が聴こえてきた』
(オークラ出版)3000円(税別) 絶賛発売中!
●石田昌隆(いしだまさたか)
1958年千葉県市川市生まれ、千葉大学工学部画像工学科卒。フォトグラファー、音楽評論家。ロック、レゲエ、ヒップホップ、R&B、アフリカ音楽、中南米音楽、アラブ音楽、ジプシー音楽など、ミュージシャンのポートレイトやライヴ、その音楽が生まれる背景を現地に赴き撮影してきた。著書は、『黒いグルーヴ』(青弓社)、『オルタナティヴ・ミュージック』(ミュージック・マガジン)、『ソウル・フラワー・ユニオン 解き放つ唄の轍』(河出書房新社)、『Jamaica 1982』(オーバーヒート)。撮影したCDジャケットは、Relaxin’ With Lovers、ジャネット・ケイ、ガーネット・シルク、タラフ・ドゥ・ハイドゥークス、ヌスラット・ファテ・アリ・ハーン、ジェーン・バーキン、フェイ・ウォン、矢沢永吉、ソウル・フラワー・ユニオン、カーネーション、ほか多数。旅した国は56ヵ国以上。
公式twitter:@masataka_ishida
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2024.10.02 20:00心霊写真家・石田昌隆インタビュー!強制収容所、ジプシーの熊使い、ニナ・ハーゲン… ベルリンの壁崩壊から30年間世界を巡った音楽の旅の記録のページです。ケロッピー前田、石田昌隆、1989 If You Love Somebody Set Them Free ベルリンの壁が崩壊してジプシーの歌が聴こえてきたなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで