生活の基盤なくしてやりたいことはできない! 伝説のバンド「the原爆オナニーズ」の初ドキュメンタリー映画『JUST ANOTHER』大石規湖監督インタビュー後編

■the原爆オナニーズは伝統芸能化していく?

−−the原爆オナニーズはバンドをやるために生活の基盤を整えている。じゃあなぜバンドをやるのかといったら「バンドをやりたいから」なんですよね。

大石 そうそう。シンプルに、ただそれだけなんですよ。

SHINOBU ©2020 SPACE SHOWER FILMS

−−それだけで40年近く続けているという。

大石 しかも、時代時代に合わせてやるべきことを変化させているというか、考え方が柔軟なんですよね。たぶん私みたいな若輩者に監督を任せてくれたのもその表れだし、TAYLOWさんは若いバンドもよく見てるし、積極的に対バンもしてるんですよね。人間、歳をとればとるほど思考も凝り固まって、何ができて何ができないかみたいなことを頭で考えちゃいがちだし、行動範囲も狭まっちゃうかもしれないんですけど、自分のコアさえしっかり持っていればいろんなことをやってもブレずにいられる。それを感じて、歳をとることがあんまり怖くなくなりました。

−−名古屋CLUB QUATTROのオープン30周年記念イベントで、TAYLOWさんがeastern youthのライブをステージの袖で観ながらぴょんぴょん飛び跳ねている後ろ姿を撮っているじゃないですか。あれ、めちゃくちゃ名シーンですね。

大石 「ただのキッズじゃん!」みたいな(笑)。本当に少年みたいに、好きな音楽を聴いて勝手に体が動いてしまう感じ、めちゃくちゃわかります。私も撮りながら「TAYLOWさん、私も同じ気持ちです。カメラ持ってなかったら私も飛び跳ねたい!」と思っていました。

©2020 SPACE SHOWER FILMS

−−映画の中で、非常階段のJOJO広重さんが「ノイズバンドだったら歳をとってボケてステージで放尿とかしても、お客さんはパフォーマンスだと勘違いしてくれるかもしれない。でも、高齢でパンクバンドをやるのは難しい」というお話をされていましたが、the原爆オナニーズは今後どうなっていくんでしょう?

大石 私は勝手に、the原爆オナニーズに伝統芸能的なものを感じていて。ライブのセットリストも毎回そんなに大幅には変わらないし、40年近くやり続けている曲もあるけど、そのときのお客さんに応じて自分たちにしかわからない微調整を加えたりしてるんですよ。最近、私は落語にハマっていて、噺家さんも高座に上がって同じ噺を何度もするわけですけど、やっぱりその日の客層によって枕の内容や噺のテンポを微妙に変えたりするんです。だから、もしthe原爆オナニーズがこの先10年、20年と続いていったらより伝統芸能化が進むんじゃないかなって。70代、80代になったTAYLOWさんが歌う「発狂目覚ましくるくる爆弾」とか、どんなにものになるんだろう?

−−一方で、40年近くthe原爆オナニーズを追い続けているファンの人たちもいるわけですよね。

大石 そう、ファンの人たちも面白くて。革ジャンを着てバリバリにお化粧した50代の女性にお話をお聞きしたら「学生時代によくライブに来てたんだけど、結婚して子供を産んで、離婚しちゃって。養育費を稼ぐために30年間ライブに行けなくて、やっと今の歳になって来られるようになったのよ。だから毎回来てるし、いつ来ても30年前と同じ曲やってて安心する」とおっしゃっていて。その感じもすごいなと。

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