金玉癌の意外な病名は「煙突掃除人の癌」だった! 金玉の表面に発癌物質が集中していることが発見され…

【薬理凶室の怪人で医師免許持ちの超天才・亜留間次郎の世界征服のための科学】

■金玉癌

金玉が癌になったスケッチ。画像は「Wikipedia」より引用

 現代では使われませんが、昔は金玉が癌になると「煙突掃除人の癌(chimney sweeps’ carcinoma)」という病名をつけていました。これは突掃除人が多く発症したことに由来するのですが、世界最初の職業病の癌とも言われています。

 結構最近まで、煙突掃除人じゃなくても金玉癌に対して使われていました。

パーシヴァル・ポット先生の肖像画。画像は「Wikipedia」より引用


 命名されたのは1775年のこと。英国の外科医、パーシヴァル・ポット(Percivall Pott)が煙突掃除人の金玉が癌になるのを見て、世界で初めて発癌物質の存在に気づきました。

 どんな原理で煙突掃除人の金玉の表面に発癌物質が集中したのかというと、全身煤まみれで汗をかくと汗の流れが股間に集まって金玉で煤が濃縮され洗わないから金玉が煤の発癌物質をベッタリ塗られた状態で固定されるからでした。

■英国の恥部

 なお、この病気は英国で主に見つかり、ドイツやフランスでは見つかっていません。理由は、これらの国では煙突掃除ギルドが煙突掃除人に全身を覆う防護服を着せていたからです。他国ではギルドが職業病を予防する役目を果たしていたけれど、英国に煙突掃除人のギルドは無く、貧困少年労働者が裸で煙突に入って掃除していたのです。

 当時の英国の煙突掃除人は幼い子供が非常に多く、5歳ぐらいから働かされていました。彼らの多くは孤児院や救貧院から貰われてきた孤児でした。

 当時の孤児院は次々と新しい子供が入ってくるので、小学生ぐらいになると労働力として売っていたのです。

親方煙突掃除人(右)と少年。画像は「Wikipedia」より引用

 この診断名が使用されなくなった最大の理由は、大英帝国が労働者の健康を守る対策も取らず、貧しい孤児を使い捨ての道具にしていた英国暗黒面を象徴する病気だからで、金玉だけに大英帝国の恥部だからです。

 金玉から大英帝国の恥部を見つけてしまったパーシヴァル・ポット先生は黙っていませんでした。
議会に働きかけて1788年に「煙突掃除人法」を作り8歳未満の子供を働かせるのを禁止して、日曜日は教会の日曜学校に通わせるように法整備しようと議会に働きかけました(※)。

(※)当時は義務教育制度が無く庶民の子供の学校は教会の日曜学校だけだった。

 しかし、誰も賛成してくれませんでした。

 そんな時代にパーシヴァル・ポット先生の味方をした人が現れました。後に国王よりスマスターの称号を授かりロンドン煙突掃除人ギルドの初代ギルド・マスターになった伝説の煙突掃除人デヴィッド・ポーターです。

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