遺体によってにおいが全然違う“強烈な腐臭”…『火葬場で働く僕の日常』作者・下駄華緒が語る“ご遺族とリアルな現場”

下駄華緒さん

――生きたまま火葬されたという都市伝説などもありますが、自分も亡くなったら火葬されたいと思いますか?
下駄 全然やってもらいたいですね。火葬は怖くない。全然大丈夫ですよ。すごい怖いアトラクションの係員さんって皆さんそう言うじゃないですか? あんな感じです。絶対安全なんですよ。生きたまま火葬した都市伝説がありますけど、現代の日本では絶対ありえない。僕がその都市伝説を否定する動画作ったら、めっきりその手の話は減りましたね。

――火葬場職員にはどんな人が向いていますか?
下駄 遺族さんの為にとか、遺族さんを感動させようという気持ちで入る人は辞めていく人が多いですね。遺族さんに”何かしてあげよう”じゃなくて”何をしてほしいか”を考えて行動する人が続く気がします。映画の『おくりびと』を観て働きに来た人は思っていたのとと違うのか辞めてしまう人も多かったです。

 遺族さんは意外と冷静で、火葬場職員が名言みたいなこと言っても淡々とされていることが殆どです。

 後は遺体を火葬中に見るので、それに耐えられるかどうか。これは一回見てみないと分からないので行ってみるしかない。ちなみに僕は初日に見せられましたね、試されるんです。僕が働いていたところでは最初の段階で新人さんが半分も残らなかったですね。

――火葬場職員の立場から遺族の方に言いたいことが?
下駄 火葬場職員は普通の職業じゃないという風に見られている方も多いです。だから、遺族さんも職員に質問したら失礼な気がして、自分の身内の骨についてあんまり聞かないんです。でも、火葬場の職員にはどんどん質問した方がいいんですよ。自分の親族の骨なんですから大事なことですよ。

 ただ、なかなか聞きにくいこともあったり気になることも言えなかったりするのでなるべく遺族さんの空気を読もうとしていました。遺族さんがお骨の説明にちょっと食いついてきたら詳しめに説明してあげたり。お子さんのご遺体の場合は骨の説明は基本的にしません。親は自分の子供の骨なんて見たくないわけですよ。早く連れて帰りたいでしょうからね。

――火葬場職員を7年された後は葬儀屋に就職されたんですか?
下駄 そうですね。火葬場職員をやってると葬儀屋さんと会う機会が多くなるんですよね。そこで仲良くなった葬儀屋さんにスカウトされて転職しました。葬儀屋の場合、まず電話をもらって殆どは病院に行きます。残りは自宅や警察。警察案件は損傷が強いケースが多く納体袋を開けて遺族さんに見せられる状態かどうかを確かめます。そこでダメだと判断した場合は、基本的には見せないようにしますけど、「どうしても」っていう時は遺族の代表の方に見せて判断してもらいます。

――損傷のひどいご遺体とはどういった……?
下駄 一番は水関係ですね。中で豆腐みたいになってしまってます。あとは顔だけと言うのもありました。富士の樹海で見つかったご遺体なんですけど、体は動物に食べられたようです。

――火葬場と葬儀屋どちらが大変でしたか?
下駄 間違いなく葬儀屋ですね。例えば葬儀1件対応すると、A4のメモ用紙が書き込みで真っ黒になります。さらに常に緊張感を強いられるので、プライベートでもピリピリしてしまうことが多かったですね。

 例えば、葬儀を行ってから火葬場まで遺族さんと一緒に行くじゃないですか? そこで霊柩車の後ろのトランクが開かない、なんていうトラブルがあっても、自力で何とかしないといけないんです。JAFを呼んでいる時間はないのでその時は助手席から運び出しました。とにかく葬儀屋に就職するとトラブルに強くなりますね。

――最後にとっておきの怖い話を聞かせていただけますか?
 僕がまだ新人で初めて子供の火葬をした時、その夜金縛りにあって夢に子供が出てきたんです。 それでしりとりを一緒にするんですが、僕の番で急に言葉が出なくなりました。そしたら子供の顔がぐーっと近づいてきて「なんて? なんて言ってるの?」って言ってきたんです。

 金縛り中の明晰夢と理解しながらも流石に怖くなって叫んだら金縛りは解けたんですけど……翌日火葬場でその子供の事を調べると事故死された子でして……僕が言おうとしてたしりとりの言葉が「くるま」だったんですよね。偶然だとは思うけど、ちょっと怖かったですね。

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