KKKを生んだ「人種差別の聖地」米テネシー州の実態に震える!! 現地で暮らした日本人は見た

KKKを生んだ「人種差別の聖地」米テネシー州の実態に震える!! 現地で暮らした日本人は見たの画像1――人種差別に立ち向かう正義の映画『KKKをぶっ飛ばせ!』(トカナ配給)公開記念特別企画! 本作の舞台となった米テネシー州における人種差別の実態とは!? 気鋭のライター、ゼロ次郎が探る!

 アメリカ南東部の中心に位置するテネシー州。カントリー・ミュージック発祥の地にしてブルース、ソウル、ロックンロールの聖地とされるなど、アメリカにおける音楽文化の一翼を担う地域であり、かのエルヴィス・プレスリーやアレサ・フランクリンも同州出身である。さらに、世界的なウイスキーの銘柄「ジャック・ダニエル」もテネシー生まれといえば、おおよそのイメージが湧くかもしれない。

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テネシー州の位置 画像は「Wikipedia」より引用

 その一方で、テネシー州の歴史は常に人種差別と共にあった。開拓時代においては白人の入植者が多数のネイティブ・アメリカンを強制移住へ追い込んだほか、大規模な綿花プランテーションの建設に伴い、1800年代前半には州人口の25%を黒人奴隷が占めた。

 南北戦争では南軍に属し、激戦区のひとつとなった末に敗戦を経験したものの、戦後も白人の特権的立場は継続し、ジム・クロウ法をはじめとする人種差別的政策がのさばった。白人至上主義団体として有名なKKK(クー・クラックス・クラン)もテネシー州発祥だ。また、公民権運動の中心的人物であったキング牧師が暗殺されたのも、同州内最大級の都市、メンフィスである。

 そんな歴史的背景を持つテネシー州は今でも治安が悪いなどと報道されることもあるが、同地では日本人も差別対象とされているのだろうか? 2007〜11年にかけて、テネシー州で高校時代を過ごしたという帰国子女の某氏は、こう語る。

「確かに、人種差別は日常的に存在しましたが、日本人はアジア系の中でも差別されにくい存在でした。というのも、テネシーには日産自動車やブリヂストンなどの日系企業が多数進出しているからです。でも、私のアダ名は『ジャップ』か『イエロー』でした……。感覚がよくわからないのですが、彼らは差別用語という認識ではなかったようです」

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イメージ画像:「Getty Images」

 経団連の報告によると、テネシー州には自動車関連企業を中心に約190社の日系企業が拠点を置いており、その雇用者数は約5万2000人と、次点の英国(約1万7000人)に大差をつけて外資系トップを走っている。

 テネシー州の人種構成においてアジア系は1%弱と圧倒的少数派で、その中のさらに一握りである日本人がそこまで酷い差別に晒されないのは、そういった“大人の事情”が多分に絡んでいることは間違いない。

「学校でも日本人に配慮しているのか、歴史の授業で真珠湾攻撃や原爆投下などについては一切触れられませんでしたね。土地柄なのか太平洋戦争はサラッと終えて、その後の公民権運動やベトナム戦争のほうに時間をかけていました」(同)

 なお、テネシー州のオークリッジという都市には核施設が存在し、第二次大戦中には原子爆弾の開発計画、いわゆる「マンハッタン計画」に関わっていた。広島に投下された原子爆弾のウランも、同地で製造されたものである。

 アメリカの歴史教育において、原爆投下は肯定的に語られることが多く、ましてや真珠湾攻撃は太平洋戦争の根本的な原因として大きく取り上げられることが多い中、それらにまったく触れないというのは日本人に対する配慮にほかならないと言えそうだ。

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イメージ画像:「Getty Images」

「学校では他にもこんな出来事がありました。スクールバスが予定時刻になっても迎えに来なかったせいで、学校に遅刻したことがあるのですが、そのことをうまく英語で説明できず、ディテンションルーム(懲罰室)という場所に入れられてしまったんです。このディテンションルームに入れられるのはとんでもない不良ばかりで、非常に不名誉なこととして認知されています。ただ、私は『こんな体験できないしな』と楽観的でいたのですが、10分ぐらいすると校長先生が真っ青な顔をして飛んできて『こちらの手違いだ、申し訳ない。どうかこのことはご両親には黙っていてほしい』と懇願してきたんです。校長先生が直々にこんな態度を取るあたり、私の父親が大手の日系企業に務めていたことが影響していたのかな、と今となっては思います」(同)

 それでは、差別の標的になるのは誰なのかというと、やはり黒人を始めとする少数派だ。再び人種構成の話になるが、テネシー州では総人口のおよそ7割を白人が占めている。対して黒人は約15%で、それ以外をアジア系やヒスパニック系、ネイティブ・アメリカンや混血が分け合っている。某氏によると、ソマリア難民や、ベトナム戦争から逃れてきた少数民族のミャオ族なども存在していたという。

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