マインドフルネス瞑想のデメリットとは? 原因不明の恐怖、不安、不快感… 科学者が警鐘
メンタルヘルスに良い影響をもたらすとして、近年”瞑想”が世界的なブームになりつつある。しかし、専門家によると手軽でヘルシーなイメージとは裏腹に、大きなリスクが潜んでいるという。英・ロンドン大学が行った調査の結果、なんと1/4に相当する人々が瞑想中に不快な気分を体験していたことが判明した。研究リーダーのマルコ・シュロッサー氏は単なる健康法としてだけでなく、科学的な面からも理解を深めるべきだと警告している。
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※ こちらの記事は2019年5月16日の記事を再掲しています。
マインドフルネスというキャッチーな名の下に世界的な流行を見せている瞑想。創造力が増し、ストレスが軽減するとして、アップル、グーグルなど欧米の大企業もこぞって社員研修に取り入れるなど、宗教的な目的のない人々もその恩恵に与ろうと瞑想するようになった。
だがこのたび、英・ロンドン大学の研究により、瞑想に大きな副作用があることが判明した。科学ニュース「Science Alert」(5月14日付)が報じている。
大乗仏教の空思想を簡潔に表した経典である般若心経は、悟りの状態を「心にこだわりがなく、恐れもない」と説いているように、瞑想によって心は軽くなり、楽な状態になるのが理想である。しかし、ロンドン大学の研究者らが、瞑想実践者1232人を調査したところ、その25.6%にあたる315人に、瞑想によって不安、恐怖、不快な気持ちになった経験があることが判明した。研究リーダーのマルコ・シュロッサー氏はこう語っている。
「健康を促進する技術として瞑想を捉えるだけでなく、科学的な理解をより深める重要性があることを今回の結果は示しています」(シュロッサー氏)
江戸中期の禅僧で臨済宗中興の祖と評される白隠(はくいん)は、厳しい修行の末、悟りを得るが、その後、精神のバランスを崩した。後に「内観の秘法」を体得し、禅病を克服したものの、彼ほどの修行者でさえ精神を患うことがあるのである。生半可な素人が一度その魔境に入り込んだら、とても白隠のようにはいかないだろう。
そして、シュロッサー氏によると、負の瞑想経験はいつ、なぜ起こるのか分かっていないため、現状では予防する手立てがないとのことだ。今後、そのメカニズムを研究していくという。
だが、負の瞑想経験をしやすい人の傾向は今回の研究でわかったそうだ。当然ではあるが、もともと極度にネガティブな思考を持つ人はそうした経験をしやすい傾向にあった。ただ、より興味深いことに、分析的・脱構築的な瞑想をしている人も負の経験をしやすかったという。
仏教には大きく分けて”止”と“観”と呼ばれる2つの瞑想法がある。止(サマタ)とは一点集中型の瞑想法であり、ひとつの対象に意識を集中させることで心を落ち着かせる技法である。一方の観(ヴィパッサナー)は、身体に起こる現象をひとつひとつつぶさに観察していく技法だ。分析的な瞑想法は観のほうである。いまここの現象に意識を向ける流行りのマインドフルネス瞑想も、ヴィッパサナー瞑想をベースとしているため注意したほうが良いかもしれない。
また、禅宗の“公案”は脱構築的な方法と言えるだろう。「両手を叩くと音がする。では片手の音とはなんだろう」というように、一見してわけのわからない問いを突き詰めて考えることで、常識的な思考を解体していくからだ。
公案には禅宗独自のロジックが働いており、決して無意味な問答ではないが、そうした思考法に慣れていない人は頭がおかしくなってしまうかもしれない。
一方、負の経験をしにくい人は「宗教的な信念がある女性」だったという。
「瞑想研究の多くはそのメリットにばかり焦点を当てています。しかし、瞑想経験の科学的研究は拡張されなければならないと思っています」(シュロッサー氏)
瞑想にメリットがあることは間違いない。しかし、以前トカナでも報じたように、瞑想には記憶力の悪化や精神病の発症といった副作用があることも確認されている。また、熟練した瞑想修行者でも、適切な指導者を欠けば、とんでもない誇大妄想にとりつかれることもある。
そもそも瞑想法は、決して創造力やストレスの軽減のために生み出されたものではない。忘れられがちであるが、こういった効果のほうこそ副作用であることは留意しておくべきだろう。仏教に限っていえば、瞑想は解脱するためのものだ。
瞑想の危険性は完全に取り除けるものではないが、適切な指導者の下で適切な瞑想法を学ぶことが何よりの予防策となる。少なくとも、流行に乗じてビジネスパーソンを狙った、創造力向上やストレス軽減を大きく喧伝している瞑想教室は避けたほうが賢明だろう。
参考:「Science Alert」、ほか
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