サンタクロースは悪魔の化身か? クリスマスの都市伝説・神話・宗教を紹介

 サンタクロースといえばクリスマスの前夜、子供たちにプレゼントを届けるため、北欧からソリに乗ってやって来るという伝説上のキャラクターだ。しかし、クリスマス自体はイエス・キリストの降誕を祝うイベントであり、イエスはパレスチナ出身のユダヤ人だったとされている。

 ではなぜ、サンタクロースは聖夜に贈り物を配るのか? その起源を辿ると、なんと悪魔の化身である可能性があるという。

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※ こちらの記事は2014年12月24日の記事を再掲しています。

 今年もクリスマスがやって来た。クリスマスといえば誰もが思い浮かべる存在、それがサンタクロース。言うまでもなく、真っ赤な衣装に身を包み、トナカイのソリに乗る老人だ。しかし今、改めて考えてみてほしい。イエスはパレスチナで誕生したユダヤ人だが、サンタクロースは北欧からやって来るとされている。よく考えてみれば、イエスの降誕を祝うクリスマスと、サンタクロースに接点など無いように感じないだろうか。そもそも、彼は何者なのか? 一体なぜ、サンタクロースはクリスマスを代表する存在たりうるのか?

 実は、そもそもイエスの降誕が12月25日だったというのは、後付けの話のようだ。実際の誕生日については諸説あるが、いずれも確固たる証拠が無い。何しろ新約聖書に記述自体が存在しないのだ。つまりクリスマスという行事は、イエスの誕生日とは無関係に、キリスト教がローマ帝国に広まる過程で、西ヨーロッパのゲルマン民族やケルト民族が信仰する多神教や伝統と融合してできたものだったのだ。


「サトゥルヌス」と「オーディン」がサンタクロースの起源?

 古代ローマ人の風習では、12月17~23日にかけて、「土星神サトゥルヌス」を奉る「サトゥルナリア祭」が行われる。時期はクリスマスと近いが、実はサトゥルヌスの風貌も、長い髭のある老人であり、サンタクロースに似ている。名前の響きが酷似している点については、指摘するまでもない。また、サトゥルナリア祭でも、ヒイラギ・ヤドリギ・ユールの丸太を使用したり、祝い酒を大杯で飲む慣習があった。つまりサトゥルナリア祭こそが、クリスマスの起源と考えられるのである。

 ローマ帝国は広大な領土を統治する必要性から、当初迫害していたキリスト教を国教に定め、そこにゲルマン民族やケルト民族の古来からの風習を残しつつも、キリスト教に名目を書き換えていった。そしてサトゥルナリア祭は、当時のローマにあった“太陽の誕生日を祝う”冬至の祭が行われる12月25日と合わせて、キリスト教に則したクリスマスという行事として慣習化したのだ。

 さらに、多神教だったゲルマン民族やケルト民族の神話には、もともとサトゥルヌスとよく似た神も存在する。「オーディン」という、やはり長髭をした老人の神だ。オーディンは8本足の魔法の馬やトナカイが引くソリに乗って空を駆けまわり、煙突から家に入り、贈り物を届けるとされる。これだけでも、サンタクロースの伝承に極めて近いことが分かるが、現代のサンタクロースのソリを引くトナカイの頭数は、8頭だったり9頭だったりする。これは当初8頭だったというのが通説で、後の世に「ルドルフ」という“赤鼻のトナカイ”が加わって9頭になったと考えられている。本来、オーディンの馬の数と、サンタのトナカイの数は同数なのだ。このような理由から、サンタクロースの起源には、オーディンの要素も強く影響したことが考えられる。ここで、サンタクロース=サトゥルヌス=オーディンという図式が浮かび上がってくるのだ。


サンタクロースは悪魔の化身?

 さて、前述の「土星神サトゥルヌス」や「オーディン」は、ともに“死”を司る神という一面も持っている。勘の良い読者は、ここで何かお気づきではないだろうか?

 そう、“死”といえば“地獄”、そして“悪魔”すなわち「サターン」が連想される――。つまり、「サンタクロースであるサトゥルヌスはサターン、すなわち悪魔の化身なのではないか?」と考える人々も存在するのだ。

 ローマ神話における土星神サトゥルヌスは、ギリシア神話における農耕神「クロノス」と同一視されている。この農耕神クロノスは、神々の王「ウラヌス」に歯向かい追放してしまったが、これは神に敵対するサターンの存在に近いものがある。

 実際、ルーベンスやゴヤといった有名な画家は、土星神サトゥルヌスと悪魔サターンを同一視した作品も描いている。さらに「クリスマスツリーの一番上にある五芒星(ごぼうせい)は悪魔の印だ」との説もあるようだ。ちなみに魔女である筆者にとって、逆さ五芒星はルシファー(堕天使)を象徴する印であり、黒魔術にも用いるものだ。

さらに聖ニコラウスも加わり……

 筆者の見解としては、サンタクロースの起源は(そこに悪魔までもが加わるかはともかく)サトゥルヌス=オーディン=クロノスとする説が妥当であると考える。

 そして時は流れて4世紀、東ローマ帝国に「聖ニコラウス」が現われ、このサトゥルヌス=オーディン=クロノスという存在とさらに混同された結果、現在のサンタクロースの人物像へとつながった。

 裕福な家庭に生まれた聖ニコラウスは、貧しい人々を支援したことで知られる。ある時、貧乏のあまり、娘を売春宿に売ろうとしていた家庭に対し、聖ニコラウスは煙突から金貨を投げ入れたが、その金貨が暖炉のそばにあった靴下の中に入った、というエピソードも残されている。クリスマスの靴下の起源はここにあるのだろう。

 このように、サンタクロースという存在に注目してみると、クリスマスという行事が古代ローマ・ゲルマン民族・キリスト教など、さまざまな文化や伝統が複雑に絡み合ったものであることがわかるのだ。何はともあれ、良いクリスマスをお過ごしいただきたい。

文=深月ユリア

ポーランドの魔女とアイヌのシャーマンの血をひき、魔女占い師・魔女優・オカルトライター・ホラー映画プロデューサーとして国内外で活動。深月事務所代表。『世界の予言2.0 陰謀論を超えていけ キリストの再臨は人工知能とともに』(明窓出版)大好評発売中!
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